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原因が分からないから「心因性」と診断ミスした症例

Wednesday, December 1, 2021

症例勉強

心身医学における診断ミスを防ぐために。

Koyama A, Ohtake Y, Yasuda K, et al. Avoiding misdiagnosis in psychosomatic medicine: a case series study Biopsychosoc Med. 2018; 12: 4. Published March 13, 2018. doi: 10.1186 / s13030-018-0122-3

事例から学ぼう

今回は、近畿地方の某大学病院で実際に起こった症例を紹介する研究論文の一部を紹介します。この症例は、すべて精神科の治療を受けている患者さんのものです。どの症状も原因がわからず「心因性」と誤診されていたというものになります。

症例報告1)

初期診断:うつ病による心因性嘔吐

79歳、以前は健康だった女性が、嘔吐と食欲不振の症状を呈した。9ヵ月前に交通事故に遭い,血胸,右鎖骨骨折,左肋骨骨折を負った。その後、3ヶ月で完治しました。

長期間の入院生活の中で、彼女は回復への自信を失い、退院後の一人暮らしに不安を覚えることもあった。

報告書に記載されている受診の2ヶ月前から、嘔吐が始まり、ますます落ち込み、食欲不振に陥った。嘔吐を恐れて食事を控えるようになり、体重が減少した。他院で上部消化管内視鏡検査を行ったが、正常な所見でした。

これらの初見から、うつ病による心因性嘔吐または摂食障害と診断し、別の病院に紹介されました。

それから、胸部X線,CTでは左横隔膜ヘルニア,上部消化管X線では胃底部より胃体部が癒着した胃捻転が認められた。上部消化管内視鏡検査では、粘膜はほぼ正常でしたが、わずかに発赤と浮腫が見られました。

胃の位置を変えるための消化管内視鏡検査は、胃体と左横隔膜が密着しており、また、胃瘻があるため、胃の位置を変えることは不可能でした。

横隔膜ヘルニアの根治手術を行い,胃軸と胃の位置を正常化した。術後、嘔吐もなく食欲も回復し、23日目に退院しました。

最終診断は「胃捻転」であった。

症例報告2)

初診時の診断 摂食障害

24歳の男性が,吐き気,嘔吐,体重減少の症状を呈している。

過去1年間、時々、吐き気と嘔吐に悩まされ、食欲は正常であるにもかかわらず、15kg(82→67kg)の体重減少が見られました。

身長は170.7cmです。

当初は肥満を改善するために体重を減らしたいと考えていた。

理想体重は65kgと述べていました。

他院で上部消化管内視鏡検査を受けたが、所見は正常であり、消化管運動機能改善薬を投与しても症状は改善しなかった。摂食障害の診断で著者らの病院に紹介されました。入院後の観察では、不意に嘔吐することもあれば、食べ物をうまく飲み込むこともあり、自己誘発性の嘔吐ではなかった。食道X線検査では食道アカラシアを認めました。

経内視鏡的筋切開術により症状は改善した。

最終診断は「食道アカラシア」であった。

結論

なぜこのような誤診があるのか?

この論文の著者は、診断システムに対する考え方のせいでこのようなことが起こるのだと考えました。

著者は誤診を防ぐための6つの対策を提案しています。


原因不明の病気を診断することはできませんので、稀な病気であってもその特徴を理解し、鑑別する知識を持つことが必要です。

1. 稀な疾患であってもその特徴を理解し、鑑別するための知識が必要である。

2. 些細なことと思われる異常所見を見逃さない。

3. 真の診断には時間がかかることを認識することが必要である。

4. 安易に「心因性」「うつ性」などの診断をしてはいけない。

 それは精神疾患への理解が不足していることを意味します。

5. 器質的な異常が認められない場合は、機能的な異常を考慮する。

6. 医師の傲慢な態度、過信、感情的な診断が誤診につながっている。


これらのことから、医療従事者の意識だけでなく患者の理解も必要である部分が示されています。患者視点としては、自分の症状の原因を明らかにしたく、それが治るものなのかどうか、一日でも数分でも早くそれを知ることを望むかもしれません。しかし、早急な診断はこの文面に示されている誤診を招くこともありますので、双方が理解して診断に臨むことが望ましい転帰へと導いてくれるのかと考えられます。

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