発熱性好中球減少症への抗生物質投与のエビデンス
Early discontinuation of antibiotics for febrile neutropenia versus continuation until resolution of neutropenia in people with cancer.A A A, Carrara E, Bitterman R, Yahav D, Leibovici L. Cochrane Database of Systematic Reviews 2019, No. 1. Number: CD012184. doi: 10.1002 / 14651858.CD012184.pub2.
内容
発熱性好中球減少症とは、がん患者さんが薬物治療中に好中球が減少して発熱することです。これにより、重篤な感染症にかかり、死に至る危険性があります。
治療には広域抗生物質療法が用いられますが、現在、抗生物質療法の推奨期間はガイドラインによって異なります。
この研究論文は、抗生物質療法の期間と好中球の枯渇、さらには耐性菌の出現との関係を評価することを目的としているようです。
結果から、短期でも長期でも抗生物質を投与する期間を変えても、症状に大きな変化はないことがわかりました。
短期の抗生物質投与では、長期の投与に比べて発熱日数が少ないというデータもありましたが、偏りがあるため確認できたとは言えません。
研究は、好中球減少症で発熱がある人を対象としました。
短期の抗生物質治療と、好中球が正常化するまでの長期の抗生物質治療を比較したものなど、8つの研究が対象となりました。好中球減少症の人の発熱エピソード計662件を治療群に無作為に割り付け、好中球減少症の人の合計662件の発熱エピソードを治療群に無作為に割り付けていました。(314件を短期抗生物質療法に、348件を長期抗生物質療法に)
すべての研究で、無作為化前に細菌が増殖していた人は除外されました。
また、2つの研究を除くすべての研究で、特定の臓器に感染している人は除外されました。
死亡率は、短期と長期の抗生物質治療群で差がなかったようです。
血液中の細菌として現れた重症感染症の人の数にも差はありませんでした。
短期間の抗生物質療法を受けた人では、長期間の抗生物質療法を受けた人に比べ、培養が陽性となった感染症の症例数は多かったものの、発熱の再発、再入院の必要性、抗生物質の変更や再投与などの好ましくない転帰の割合には差がありませんでした。
※培養が陽性であるということは、生きた真菌が存在することを意味します。
この研究から、真菌感染率と抗生物質耐性の発達には差がないことがわかりました。
研究者のコメント
既存のエビデンスとその確実性の欠如により、発熱性好中球減少症のがん患者において好中球減少症の解消前に抗生物質の投与を中止することの安全性について強い結論を出すことはできませんでした。長期的な抗生物質療法を支持する微生物学的な結果は、抗生物質療法下での培養陽性率が低いために誤解を招く可能性があり、感染率に実質的な差があるわけではありません。抗生物質耐性が増加している時代には、この問題を解決するために、適切にデザインされ、適切に機能するRCTが必要です。