COVID-19感染患者とインフルエンザ感染患者の違い
近い将来では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)とインフルエンザウイルスA / Bの共循環が起こる可能性が考えられますが、臨床的観点から、2つの疾患実体の区別は患者管理にとって重要なことになります。この研究では、入院時にコロナウイルス病2019(COVID-19)と季節性インフルエンザ患者の臨床的差異を検出することを目指した内容となっています。
単一施設による観察研究では、
2019年11月~2020年5月の間にCOVID-19、インフルエンザで入院したすべての連続した患者を含め、データは全国的な監視プログラムと電子健康記録から抽出したものとなります。COVID-19とインフルエンザ患者は、ベースライン特性、臨床症状、および転帰の観点から比較され、再帰的パーティショニングを使用して、COVID-19とインフルエンザ患者を区別するための分類木を生成しました。
結果として、
96人のCOVID-19と96人のインフルエンザ患者が対象となり、 COVID-19では年齢の中央値は68歳対70歳(p = 0.90)、72%対56%(p = 0.024)は男性、チャールソン併存疾患指数(CCI)の中央値は1対2(p = 0.027)でした。
症状の発症から入院までの時間は、インフルエンザ患者(中央値3日)よりもCOVID-19(中央値7日)の方が長く、分類ツリーでのCOVID-19の診断に有利な他の変数は、収縮期血圧の上昇、喀痰の欠如、頭痛の欠如でした。
このツリーは、86/192人の患者(45%)を2つのサブセットに分類し、患者の80%以上がそれぞれインフルエンザまたはCOVID-19に感染していました。院内死亡率はCOVID-19患者の方が高い結果となっています。
結論として、同じような感染経路を持つCOVID-19とインフルエンザの臨床症状の区別は困難であり、入院日数ではCOVID-19の方が有意に長く、死亡率も有意に高いことが示された1つの結論となっています。
Sieber, P., Flury, D., Güsewell, S. et al. Characteristics of patients with Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) and seasonal influenza at time of hospital admission: a single center comparative study. BMC Infect Dis 21, 271 (2021). https://doi.org/10.1186/s12879-021-05957-4
まとめ
臨床症状の区別が困難とされていましたが、入院期間の長さで比較できる点がわかりました。これはCOVID-19感染の方が発症から症状が起きるまでの期間が長いとされており、発症後5~8日で悪化する例が報告されていたことも含まれていました。
また、性差では男性の方が重症例の危険因子とも考えられており、酸素飽和度に関しても若干COVID-19感染時の方が低いともされています。頭痛に関してはインフルエンザ感染の時の方が高い割合で起こるようで、嗅覚症状などもCOVID-19の特徴ともいえるようです。
収縮期血圧の高さでもCOVID-19の方が高いなどのデータもあったり、検査数値でも有意に高くなる区分があるようですが、分類ツリーで変数調整した際にインフルエンザとCOVID-19での違いは見られないようです。
最初に発表された分類ツリーであり、報告された症例もバイアスの可能性があることから、今後区分がしやすくなるかもしれませんが、現状では臨床症状での判断が課題とされているという結果となりました。