難治性のメニエール病に対する自律訓練法
メニエール病の発症と経過に重要な役割を果たす心身的なストレス。外科的治療と鼓室内ゲンタマイシン治療は、従来の医学的治療では手に負えない症例に採用される選択肢ですが、一般的なリラクゼーションとして使用されている自律訓練法(AT)を含む心理療法は、広く受け入れられていません。この論文は、難治性メニエール病に苦しむ被験者におけるATの投与の成功について説明されていたものです。
51歳の男性患者は、
1994年以降、眩暈を伴った変動性の右感音難聴に苦しんでいました。2002年5月、彼は右感音難聴を伴う重度の眩暈の発作のため、入院しました。この時、右側に向かって自発性眼振が観察されました。2004年4月以降は、彼は月に数回、従来の医学的治療では扱いにくい右側耳鳴りを伴う眩暈を経験していました。その4ヶ月後、右鼓膜に鼓膜挿入を行いました。
しかし、デキサメタゾンの鼓室内注射による効果はなく、彼はメニエット療法と鼓室内ゲンタマイシン注射を拒否しました。
彼は眩暈、耳鳴りに加え、不眠症、不安に苦しんでいました。
ベンゾジアゼピンなどの精神安定剤やセロトニン選択的再取り込み阻害薬(SSRI)などの抗うつ薬でも眩暈は無くなりませんでしたが、不眠症は僅かに改善されました。
2006年12月、患者は心理療法士との心理カウンセリングを開始しました。認知行動療法(CBT)と一緒に簡単な心理カウンセリングの後、彼は自律訓練法(AT)を開始しました。彼は、書面によるスケジュールに従い、自宅でATトレーニングを定期的に継続し、彼の不眠症、耳鳴り、眩暈はたった4回の心理療法セッションの後、数週間以内に消えました。
さらにATの6つの標準式を習得するために、彼は2回セッションを受け、その後は追加の治療なしで9ヶ月間フォローアップを受けました。
彼は現在、精神安定剤を含む薬物を飲むことなくATを続けており、追加の治療は行われませんでした。
Goto, F., Nakai, K., Kunihiro, T. et al. Case report: a case of intractable Meniere's disease treated with autogenic training. BioPsychoSocial Med 2, 3 (2008). https://doi.org/10.1186/1751-0759-2-3
自律訓練法とは、
自律訓練法は、1932年にドイツの精神科医シュルツ(Schultz, J. H.)によって体系化されたもので、シュルツによると「中性催眠状態を得るための生理的合理的訓練法であり、心身全般の変換をもたらすものである」と述べられています。
簡潔述べると、外部刺激を絶ち脱力する方法だそうです。
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まとめ
難治性のメニエール病と診断された患者が、一般的に行われている治療法では症状の軽減が出来なかったので心理療法を実践したら数か月で症状が無くなったという症例になりました。
あくまでも症例であるため、心理療法無敵じゃね?みたいな結論ではなく、治療法の1つとして採用されるべきであると思ったのでこのブログでも紹介した内容となります。
自律訓練法なるものは、セルフでも実践できる内容と記述されている資料も見掛けましたが、同様の症状で困っており、心理療法を検討するならばそれらを専門で提供できる専門家の元セッションを受けた方が良いと思われます。