食品税と肥満
食料品に税をかけることは、2019年のコロナウイルス病(COVID-19)のパンデミックで観察されたような不利な経済的ショックの時期に、国や地方自治体にとって安定した税収の流れを表すことになります。以前の研究によれば、食料品に掛かる税が健康に悪影響を与える可能性のあるメカニズムを示唆しており、食料品税の空間的および時間的変動を文書化し、郡レベルの食料品税と肥満および糖尿病との統計的関係を経験的に調べることを目的とした研究を紹介します。
2009~2016年までの
郡および州レベルの年間食料品税の新しい全国データセットを収集し、このデータを疾病管理予防センターの肥満率に関するデータに基づく3年間の郡レベルの見積もりにリンクさせました。郡レベルの固定効果推定量を使用して、肥満と糖尿病の発生率に対する食料品税の影響を推定し、時間の経過とともに変化する潜在的な交絡因子のサブセットも制御します。
結果として、
食料品に掛ける税を1%増加することは、郡レベルの肥満、糖尿病率の0.588、および0.2155%の増加に関連していることがわかりました。
食料品税のある郡では、肥満と糖尿病の有病率が高まっていることがわかり、食料品税による肥満と糖尿病の増加による経済的負担は59億$と推定することが出来るようです。この推定に基づくと、肥満と糖尿病の発生率への影響のみを考慮した米国全体の食料品税の撤廃の費用便益比は1.90という結果になりました。
Wang, L., Zheng, Y., Buck, S. et al. Grocery food taxes and U.S. county obesity and diabetes rates. Health Econ Rev 11, 5 (2021). https://doi.org/10.1186/s13561-021-00306-2
まとめ
費用便益比とは、総便益を総費用で除した費用便益比で表し、このB/Cの値が1以上あれば、一定の費用対効果が得られる事業であるという「客観的な評価」を行うための分析方法のことだそうです。
結果として、食品に税を掛けることが肥満や糖尿病患者を増やし、それらの治療に掛かるコストを考慮した場合、税を撤廃した方が費用対効果が得られることが分かる研究となっていました。
何故このようなことになるのか?ということについてですが、研究によれば税の掛かるものの中でフルーツや野菜といったもので高額になるものよりも、加工食品などのように一定のカロリーが摂取でき、簡単で、価格が比較的安く、体に悪いものが摂取されやすくなる傾向にあるためと説明しています。
実生活でも想像していただくと、健康的な食生活を送ろうとすれば割とコストがかさみ、安価な食品はジャンク的なモノの選択肢ぐらいしか残らなくなりますので、この結果には納得のいった部分にもなります。
といいえ、対象となった研究の地域では実際に食品への課税を撤廃する動きもあるようなので、この結果をどう捉えるのか次第ですが、何等かに課税したい国にとって毎日購入する機会のある食品に税を掛けることは止めないのかもしれません。