癌と診断された時の家計の損失
癌であると診断されてから、より高い死亡リスクに直面している間に、家計資産および家計の財務ポートフォリオに対する影響がどれほどあるのか考えられることは少ないです。経済理論によれば、癌の生存者が治療のための差し迫った経済的ニーズを満たし、再発に関連する予想される医療費のリスクをヘッジするような方法で、彼らの富を使い果たすであろうと予測しています。この予測に基づいて中高年のアメリカ人(50歳以上)のがん診断に応じた家計資産の長期的な変化を調べた研究となります。
健康と退職に関する研究の
2000~2014年を使用して、がん診断からの経過時間で家計資産を回帰する家計固定効果回帰を推定したものとなります。
回帰推定は、人口統計学的特性、一般的な健康状態、雇用の結果、および家計の経済的属性に合わせて調整され、家計資産は、純資産合計と各資産カテゴリーで保有されている貯蓄額によって測定されました。
癌に起因する世帯資産の損失は、癌患者のいる世帯あたり$で125,832$と推定されました。
この変化は、投資資産、その他の貯蓄、不動産資本、および事業資本の統計的に有意な減少、および無担保債務の増加によるものであります。また、診断から残りの研究期間までの+ 2年から、現金および現金同等資産が2〜28.0%増加していました。現金の蓄積は、十分に保険をかけられたグループ(複数の補償範囲)と限られた保険のグループ(単一の補償範囲)の両方で観察されました。
結果としては、癌の治療による支出が増えるため、流動性のある支出を抑え貯蓄している結果、現金などの資産が増加する傾向にあるが、癌患者のいる世帯で13,832,518円ほどの損失をする可能性があるということでした。
Pak, TY., Kim, H. & Kim, K.T. The long-term effects of cancer survivorship on household assets. Health Econ Rev 10, 2 (2020). https://doi.org/10.1186/s13561-019-0253-7
まとめ
数値的なものは研究による試算なので、実際には診断される内容や治療法によって大きく変動はする数値となりますが、病気がわかってから保有される資産の動きについては納得した内容となりました。診断されてから保有している資産を売却し、現金などに変え、治療費に充てるといったことなのでしょう。
癌治療に対する保険なども多くありますが、適用範囲などの制限があることが問題となっていることも述べられており、こういった出来事に対してどのように動くのかを考えていないと、いざ治療となった際に掛かる費用を準備することなど到底不可能なので、家族などにどのような方針で考えているのかを話し合ってみても良いのかもしれません。
研究内では十分な保険などに入っていたにも関わらず、1/3の人が費用が足りなかったことを述べていたり、治療は投薬などから介護までに渡ることから意外に費用が嵩むことも述べておりました。
意向だけでも話し合っても良いのかもしれませんね。