検疫の心理的苦痛
伝染病の曝露を減らすための措置としての「検疫」は、かなりの心理的影響を及ぼすことが考えられます。研究者らは、この研究でCOVID-19パンデミックの間に検疫に住んでいるイタリア人の心理的に苦痛な経験に関する情報を収集することを目的としました。
研究は、
参加者は2020年4月6日~20日の期間で、オンラインアンケートに回答してもらいました。過去14日間の検疫からの人口統計学的、身体的症状のデータが収集され、検疫の心理的影響をCOVID-19外傷性苦痛指数(CPDI)によって評価されました。
結果として、
合計20,158人がオンライン調査を完了し、これらのうち59.1%はロンバルディア州からのものであり、調査期間中に陽性症例が37.7%特定されました。
回答者の30.1%は男性で、55.9%は18〜50歳、54.3%は高等教育を受け、69.5%は労働者、84.1%は3部屋以上の家に住んでおり、13.7%は一人暮らしでした。
9.7%がCOVID-19陽性の人と接触した経験があります。
回答者の48.6%が心理的影響を報告し、43.4%が軽度~中等度、5.2%が重度の心理的影響を報告しました。
多変量解析の調整後、CPDIスコアの増加は、
・女性
・高い教育レベル
・失業中
・2部屋以下の家に住んでいる
ということに関連していることが示されました。
心理的苦痛の種類に関して、9.9%は中等度~重度の「抑うつ症状」5.5%は中等度~重度の「不安症状」3.9%は中等度~重度の「身体的症状」が報告されました。
地域別のレスポンダー率と陽性COVID-19症例の間に正の相関が見られました。ロンバルディア地域のレスポンダーを考慮すると、CPDIスコアと居住地からレッドゾーンまでの距離の間に負の相関が見られ、心理的苦痛のより高い有病率は、レッドゾーンから最大25 km離れており、特に15kmまでの重度の苦痛が見られました。
Bonati, M., Campi, R., Zanetti, M. et al. Psychological distress among Italians during the 2019 coronavirus disease (COVID-19) quarantine. BMC Psychiatry 21, 20 (2021). https://doi.org/10.1186/s12888-020-03027-8
まとめ
この研究で「検疫」という言葉が使われていますが、空港などの検疫ではなく、都市部から感染を拡大しないための閉鎖措置などを思い浮かべながら読んでください。
例とすれば、東京で緊急事態宣言が発令され、東京の中心地から研究では25km範囲に居住する人が心理的影響を受けやすいということだそうです。
心理的影響を受けやすい人は、女性、教育を適切に受けた人、失業中、2人以下の居住といった条件が関連していることがわかっているため、研究の調査はイタリアで行われたものですが、日本でも同様のことが考えられるのかもしれません。
しかし、研究ではwebアンケートを実施していたため、応答しなかった人はストレスが大き過ぎるのか、無さ過ぎて応答しないなとも考えられることなどが結果の制限事項と書かれています。