仕事中のストレスと生理学的反応と性格特性
この研究は、職場のストレッサーと唾液中のコルチゾール濃度の変動との関係を説明する際の性格特性の寄与を評価することを目的として行われたものでした。
コルチゾールとは、
コルチゾールは、副腎皮質ホルモンである糖質コルチコイドの一種であり、医薬品としてヒドロコルチゾン とも呼ばれる。炭水化物、脂肪、およびタンパク代謝を制御し、生体にとって必須のホルモンである。3種の糖質コルチコイドの中で最も生体内量が多く、糖質コルチコイド活性の約95%はこれによる。ストレスによっても分泌が亢進される。
Wikipediaより引用
マルチレベル回帰分析は、
34のケベック企業からの401人の従業員のサンプルを対象に実行されたものになります。唾液サンプルは1日5回(覚醒時、覚醒後30分、午後2時、午後4時、就寝時に)収集され、3日間繰り返されました。仕事に関連する変数は、スキルの利用、決定権、心理的要求、身体的要求、仕事の不安、不規則なスケジュール、労働時間数、および同僚や監督者からの社会的支援で構成されていました。
性格特性は、自尊心、統制の所在、およびビッグファイブで構成されていました。
結果として、
覚醒時と30分後のコルチゾールレベルは、休日よりも就業日で有意に高く、心理的要求と仕事の不安は就寝時のコルチゾールレベルの低下と関連していることがわかりました。
また、自尊心は、覚醒時と午後4時の身体的要求とコルチゾールレベルの関係を緩和し、快感は覚醒時と午後2時のコルチゾールレベルの低下と関連し、労働時間数と午後2時のコルチゾールの関係をさらに緩和しました。
結論として、
特定の労働条件と特定の性格特性は、唾液中のコルチゾール濃度の変動に関連しており、職場での唾液コルチゾール濃度は、性格特性によって部分的に調節されていることがわかりました。
Parent-Lamarche, A., Marchand, A. The moderating role of personality traits in the relationship between work and salivary cortisol: a cross-sectional study of 401 employees in 34 Canadian companies. BMC Psychol 3, 45 (2015). https://doi.org/10.1186/s40359-015-0102-3
まとめ
この研究では、性格特性により唾液中のコルチゾルの数値に変動があることが分かったという内容になりました。
コルチゾルが高いということは、生理学的に仕事のストレスに対する耐性が整っているとも捉えることが出来、コルチゾルレベルが低いとストレスに対しての耐性が低い状態になっているとも言えます。
自尊心の高さと協調性の高さは、コルチゾルのレベルが起床時から午後2,4時と有意に高く、生理学上で仕事に対する準備が出来ている状態でもありますが、自尊心が低いと午後2,4時の時点でコルチゾルが低くなっているということになっていました。
また、神経症的傾向が高い人は同僚のサポートなどが増えるが、就寝時にもコルチゾル値が高いことがわかっています。
よって、ストレッサーに対する適応やストレス解決が早い人の特徴として、自尊心が高く、協調性もあり、低い神経症的傾向であることが示されていました。
しかし、職場の状況やストレッサーによってこの結果が通用しないこともあるようなので、職場環境を振り返っていく必要は出てきます。