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強い罪悪感と嫉妬から起こる食欲不振症を理解するためのゲーム

Monday, April 5, 2021

精神科

 

神経性食欲不振を理解するためのゲーム

神経性食欲不振症(AN)の患者は、高いレベルの罪悪感と嫉妬を感じやすいことが想定されています。最後通牒ゲーム(UG)は、2人のプレーヤー間で金額を分割する際の対人行動に焦点を当てたゲームとなります。

wikipediaより引用

UGによる研究は、人が結果の不公平を減らす傾向があることを示しており、経済的に不合理な意思決定は、罪悪感と嫉妬から部分的に生じる可能性があることが説明できると結論付けられています。研究者ら、高い罪悪感と嫉妬を反映したAN患者がUGで過度に公平に行動すると仮定した実験を行いました。

UGを使い、

24人の日本人AN患者と22人の年齢をマッチさせ、健康的な人と罪悪感と嫉妬の特徴を比較調査していました。UGの結果と実験後の質問票によって確認された意思決定戦略との関係を分析していました。

結果として、

AN患者はそうでない人と比較して、レスポンダーに多くの金額を提供していることがわかりました。一方、レスポンダーとして、AN患者はそうでない人と比較してオファーを受け入れるためにはるかに高い割り当てを要求することもわかりました。レスポンダーとしての戦略に関して、AN患者はそうでない人と比較して公平性をより重視し、金銭的報酬をあまり重視していない傾向にありました


結論として、日本人の神経性食欲不振症を患った人は、
・高い罪悪感
・高い羨望
を持ちながら、「公平性を強く好む」ことを示していました。

これらの感情に対する高い感受性は、食事や体型に対する問題や対人関係の意思決定にも影響を与えている可能性があります。


Isobe, M., Kawabata, M., Murao, E. et al. Exaggerated envy and guilt measured by economic games in Japanese women with anorexia nervosa. BioPsychoSocial Med 12, 19 (2018). https://doi.org/10.1186/s13030-018-0138-8


まとめ 

この研究からは、神経性食欲不振症の人の心理を理解するためのゲームを使い、その傾向か罪悪感や羨望に対しての欲求の度合いを確認し、それらの欲求が高いことがわかったというものになります。つまりは食欲不振症の人の気持ちを理解するならば、これらのゲームにて「過剰なオファー」「過剰な拒否」といった行動をするとAN患者の気持ちが理解できる可能性があるということです。

これらは、罪悪感の強い人はより「公平性」を、羨望が多い人は「不当な申し出を拒否」する傾向があるため、食に対しても、対人関係に対しても同様の行動がとりやすいことが説明されている再現性のある結果となっているようです。

因みに公平性を強く望む人のもう1つの特徴として、「確実性」「社会的拒絶の恐れ」「他人による否定的な評価を受け入れられない心理的柔軟性の欠如」といった背景もあります。こういった背景があるため、過度に社会的規範と規則に依存する傾向となり、柔軟性の欠けたコミュニケーションをとってくることが考えられるというものです。

神経性食欲不振症を理解するために、一度最後通牒ゲームをプレイしてみては如何でしょうか?

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