前十字靭帯再建術と術後の様子
紹介する研究は、前十字靭帯再建術(ACLR)後のアスリートの運動アイデンティティとスポーツへの取り組みおよびスポーツへの復帰(RTS)状態との関係を明らかにすることを目的としたものになっています。
ACLR後
8〜24か月経過した39人の参加者がこの横断的研究に含まれ、尺度には運動アイデンティティ測定尺度とスポーツコミットメント尺度が含まれていました。
さらに、キネシオフォビアのタンパスケールとACL-傷害後のスポーツ復帰スケールを使用して、キネシオフォビアと心理的準備を測定しました。
被験者は、2つの質問に基づいて、Yes-RTSまたはNo-RTSに分類され、負傷前と同じレベルの競技でスポーツに復帰したかどうかが判断され、カイ二乗検定、フィッシャーの直接確率検定、対応のないt検定、およびマンホイットニーのU検定を使用してデータを分析しました。
結果として、
RTSグループは、運動アイデンティティ測定尺度(P = 0.023)、スポーツコミットメント尺度(P = 0.027)、ACL-スポーツ復帰で有意に高いスコアを示しました。
損傷後の尺度(P = 0.002)、キネシオフォビアスコアのタンパ尺度(P = 0.014)は、RTSなしのグループと比較して有意に低かった。
結論として、再建術を受けたアスリートで競技に復帰した人は、そうでない人と比較して運動恐怖症が少なく、スポーツへのコミットメントも高いことがわかった、というものでした。
Ohji, S., Aizawa, J., Hirohata, K. et al. Athletic identity and sport commitment in athletes after anterior cruciate ligament reconstruction who have returned to sports at their pre-injury level of competition. BMC Sports Sci Med Rehabil 13, 37 (2021). https://doi.org/10.1186/s13102-021-00264-6
まとめ
前十字靭帯損傷から、再建術を行ったアスリートは負傷する前と同様のあパフォーマンスを発揮しながら競技復帰し、運動恐怖症なども少なかったという結果になった研究でした。しかし、再建術を受け、競技復帰したのは再建術を受けた人の63%となっていたため、再建術が神の如き効果があるというわけではない、ということです。
復帰できるかどうかの要因として、リハビリテーションの進行具合が影響することも書かれており、在宅運動やセルフケアなどを遵守している人は進行が十分となり得る可能性が高いことも書かれていました。
一般的にもそうだろ、と思うかもしれませんが、怪我をしてしまうと何も出来なくなる感を覚える人もいて、何気ない歩行ですら一歩が出ないなんてことがあります。リハビリテーションなので一気に進む、というよりは少しずつ出来るようになっていく形なので、臨床としては適切に組み立てられた計画に沿って、共有し、1つずつ進めていくことがこの研究による結果の再現となることがわかっています。
とはいえサンプルサイズが小さいものなので、これらによって得られている数値が絶対的なものではない、ということにご注意を。