個人的な価値観と幸福の関係性
幼い頃に形成される個人的な価値観は、将来の健康状態に影響を与える可能性があるため関係性を調査した内容の研究を紹介します。
この研究の目的は、
青年期の個人的価値と成人期のメタボリックシンドローム(MetS)に関連する生物学的指標との関係を調査することです。使用された縦断的データは、階層化、健康、収入、および近隣に関する日本の研究(J-SHINE)からのもので、青年期の個人的価値観は、価値観の優先順位と価値観へのコミットメントで構成される自己申告式質問票から2017年に遡及的に取得されました。低密度および高密度リポタンパク質(LDL、HDL)コレステロール、ヘモグロビンA1c(HbA1c)について、2012年に静脈サンプルが収集されました。
ボディマス指数(BMI)、胴囲、収縮期および拡張期血圧(SBP、DBP)も測定されました。各変数の関連性は、偏相関分析によって調べられ、さらに複数の線形回帰分析を実施して、個人の価値とMetSの代理としてのバイオマーカーの標準化されたスコアの合計(Zスコア)との間の全体的な関連を調べました。
結果として、
261人の男性と407人の女性を対象とした結果から、
男性の場合は「社会に影響を与える」という個人的価値の優先順位は、高HDLコレステロールと、腰囲が低く、SBPが低い「身近な人を大切にする」ことと関連していました。
女性の場合は「他の人に迷惑をかけない」という個人的価値の優先順位は、高いSBPと低いDBPに関連していました。
「経済的に成功する」という価値観については、男性にとっては健康的に悪い結果と関連していました。
Sasaki, N., Watanabe, K. & Kawakami, N. Personal values in adolescence and their associations with metabolic biomarkers in adulthood: a Japanese population-based study. BioPsychoSocial Med 14, 26 (2020). https://doi.org/10.1186/s13030-020-00197-5
まとめ
幼少期から獲得する"信念"は、将来的な肥満や血圧、血清成分に影響するのか?という疑問を元に研究され、結果として、社会に影響を与えたり、身近な人を大切にする、他人に迷惑をかけないといった信念が健康に良い影響があることが示唆されるものでした。
そして、経済的な成功を信念に持つと健康面で悪影響していることがわかっているため、社会通念上の信念は間違ってなかったよ、と結論付けられていましたが、昨今の状況ではそういった通念が変化してきているようにも思われます。
社会に影響を与える、というよりは、自分が幸福になる、男女平等な権利と生活を、自由を、といった信念が繰り返される場面も増えてきており、そういった傾向と健康面の関連性はわかりませんが、この研究でいえば不健康になる信念なのかもしれません。
よくよく言われることとしては、社会的成功を成した人らの格言として、"人"に対して何等かの影響を与えることを最優先として、後から経済的な報酬がついてきたといことが言われています。しかし、メディアやSNSなどの生活自慢などから、物質的な幸福を優先する傾向から、幼少期に得られる信念も経済を優先としたものに変化していくのかもしれません。
人の役に立つ、と綺麗ごとのようにも聞こえますが、そういった信念は自分自身の健康面でも影響するなれば綺麗ごとな信念で十分にも思えます。