記憶と正確さ
医療現場などでは症状の状況などを伺うために、記憶を頼りに判断しなければならないことが多々あります。それは「他人の記憶」なので、どれぐらい信頼性があるのか?というとそこまで正確ではないという答えが多く返ってくることかと思われます。
これらの記憶の正確性について調査されている論文がありました。
研究は、
人々が思い出したときに想像し、想像したときに記憶を使うことにあり、想像するということは「記憶を扱う」ことが含まれています。自伝的記憶(AM)というものは新皮質、辺縁系を通して分布するニューラルネットワークによって仲介される複雑な認知システムでありますが、自伝的記憶には「自伝的知識」があり、それは「個人的な事実」に関する知識が含まれています。
人が生きてきた時代の歴史などの文化的な知識、これらはエピソード記憶、経験から導き出された断片的な知識も含まれます。
このような知識、記憶を通して自己の主要部分を形成しているということが考えられます。
このことを解説しますと、ある風景を思い出して欲しいのですが、それは10年ぐらい前のものです。その風景をハッキリと正確に思いだすことが出来ますか?
天気、時間、人、生き物の分布など詳細に覚えている人は殆どいないと思いますが、PCなどによるデジタルツールはその瞬間を保存できるため、写真にある情報は正確そのものと考えられます。
つまり、人の記憶で構築される想像する映像は、様々な情報を処理せねばならないため、すべての情報を正確に思い出すことは非常に困難なことだと言えます。
このように「自伝的記憶」というものは、自分の持っている記憶から「想像」しながら思い出すことで想起されるものなので、強烈なエピソードなどが優先して思いだされたり、記憶していたりします。それは自伝記憶とは別に「エピソード記憶」とされるもので、エピソードがはっきりしている部分の記憶は鮮明であることもあります。
このように記憶の仕方には、それぞれの場面や思い出し方にも様々な要素があるため、正確性が欠けやすいものだということがわかってきます。
記憶を忘れるということが、脳の炎症や心理的背景も関与し、脳の機能が障害されている状況では記憶を捏造してしまうことも報告されていることから、記憶には実際体験したことに加え、精神的な面が強く干渉してくることがわかっています。
これは、その人が体験したストレスが部分的であったことだとしても、ストレスになった部分が強調され、事実とは異なる記憶を発現することも"多々ある"ということです。
記憶を忘れる
記憶は忘れてしまうものです。忘れるのは脳の炎症や、心理的症状などにより起こり、前頭葉や側頭葉を患った70歳代の女性の例では、「嘘」が見られるようになったということも報告されています。記憶を忘れるということが、脳の炎症や心理的背景も関与し、脳の機能が障害されている状況では記憶を捏造してしまうことも報告されていることから、記憶には実際体験したことに加え、精神的な面が強く干渉してくることがわかっています。
これは、その人が体験したストレスが部分的であったことだとしても、ストレスになった部分が強調され、事実とは異なる記憶を発現することも"多々ある"ということです。
対処法は、
他人の記憶を頼りに作業する人らは、引き出した思い出、記憶は否定しないことを心がけます。記憶というものは個人と同様なので、記憶を否定したり疑ったりすることは、人格を否定していることと同義であることから、否定的な行動や言動は取らないに越したことはありません。まずは、知り得たエピソードに共感を示し、そのエピソードから何を求めているのか?を尋ねていくようにしますが、その時はエピソードを引きずらないようにし、希望に対して具体的な提案・行動を示す、ということが記憶の捏造や忘却をするといったことから、個人に対して攻撃的にならなくて済むと思われます。
まとめ
人の記憶は、記憶というものを想像するが故に、捏造されたり嘘をついたりとあることないことが出てくるものだということを前提に、カウンセリングなどが必要な作業をしている人は、上述にも書いた対処にて相手を否定しないことから始めてみてください。