複数の資格を持つ意味があるのか?
医療系の資格には医師を始めとした様々な仕事があります。それだけ種類があるということなので、それぞれの資格で出来る「業務範囲」というものがありますが、昨今では医療系の資格でも複数を所持する人が出てきています。
今回はそういった複数の医療系資格をとる意味?について考察していきます。
私なりの結論から、
複数の医療系資格を取得する意味はないと考えています。
理由としては、取得しても掛かる費用と得られる報酬の釣り合いが合わないこと、多方面から見過ぎるが故に、見落としなどの医療過誤を招く可能性もあるからです。
では、それぞれの理由について考察してみましょう。
費用問題
例えばですが、著者が取得している柔道整復師であれば100万円前後が1年間に掛かるコストです。3年間は養成機関に通わないとならないため、300万円以上のコストが掛かることが想定されます。実際は400前後あたりは掛かってきます。
そして、柔道整復師と一緒に取得されやすい「鍼灸師」の資格ですが、厳密にははり師、きゅう師の2つを同時に取得する流れとなっていますので、学費は450万円ぐらいが相場だそうですが、免許登録費が2倍掛かるため、柔道整復師よりも高いコストになります。
そして、就業先として多い整骨院ですが、初年度の年収は240万円ぐらいが相場となることが多いです。複数国家資格を所持していると手当で+1~2万円ほど貰えますが、複数の所持でも250万円ほどという年収の計算となります。
上述のような柔道整復師と鍼灸師を取得するだけで850万円は必要と考えると、単純に3.4年は資格を取得するコストだけで掛かってしまうことになります。
長期的な投資と捉えることも出来ますが、3.4年で回収する投資は健全なのか、そしてこの年収が維持できるとも限らないため、投資リスクはあると考えなければなりません。維持できない理由として、勤め先が閉院するリスクです。
しかし、単独資格であれば、1.9年ほどでコストを支払えることになるため、僅か数万円の手当のために2倍の期間が必要になると考えて頂くと如何でしょうか?
実務的な面では、
柔道整復師は、「骨折・脱臼・捻挫・打撲」に対して、手技、物理、運動療法などを用いて施術できる資格で、この業務は柔道整復師法の「業務独占」となります。また、鍼灸師も鍼を使った慢性疾患を始めとする症状に対して「鍼・灸」などを行える「業務独占」という法に定められた業務範囲があります。
よって、複数資格を取得するということは、業務範囲を拡げることが出来るため、知識や技術面においては有利となります。
多くの人が資格を複数取得する理由は、業務範囲を拡げる、知見を拡げるといった意味で取得すると思われます。
例として、著者が1人で鍼灸整骨院を運営していたとしましょう。
捻挫で訪れた患者に対応するため、鍼灸師として、柔道整復師として施術対応しますが、柔道整復による収益は\1,500前後ぐらいだったとし、鍼灸による実費治療が\2,000と仮定し、1人の施術により得られる収益が\3,500ぐらいとし、1人に30分ほどの施術時間を要すると仮定した場合で計算してみましょう。
1日の営業時間が9:00~12:00 15:00~20:00として、1日の稼働時間が8時間で上述の設定ですと1床16人を受け入れるのが限界です。そして2床にしても32人までは対応できる場合は1日に\112,000の売り上げとなり、24日稼働で\2,688,000が想定できる月商となります。
このように上手くいけば、個人経営でも資格取得により業務範囲を拡大してもコストを早く回収できることが考えられますが、実際はこんなに上手くいくことなんてありません。
忙しすぎる問題
上述のように設定した場合、32人に休まず対応し続けるとなると、かなりの集中力が要求されてきます。人間は8時間も集中が続く生き物でしょうか?実際にはそう長い時間集中できないため、業務内にて何等かの不手際を起こすリスクがあります。
あるあるですが、柔道整復は手技療法が強くなり過ぎた、固定がきつ過ぎたなどで、患者を負傷させる人もいますし、鍼灸は鍼を抜き忘れたといったことを聞きます。
どれもかなり問題であるため、これらの治療法がマルチタスクとなってしまう人にとっては、1つ1つの作業が注意力散漫となり、いつミスをしてもおかしくないという最悪なケースも考えておきます。
そもそも
上述で設定した人数などを整骨院単独で行った場合、1人あたりに必要な時間が30→20分となることで、1床の稼働人数が3人になることから、48人は対応できるという計算も出来ます。48人を\1,500単価で診続けることが出来れば、1日の売り上げは\72,000となるため、24日稼働で\1,728,000の売り上げが作れる可能性が僅かながらにあります。
数値だけを見れば、1人で柔道整復も鍼灸も出来た方が売り上げ額は上がりますが、対応人数が増やせることで拡張性が出る可能性と見ることも出来れば、少ない人数でもしっかりと対応できる方がいいという見方も出来ます。
まぁ、こんな計算は狸の皮算用でしかないため、実際の経営はこれよりも額面が下がるのでかなり厳しいことになるのは間違いがありません。
まとめ
以上が複数資格を取る必要があるのかについて考察となりました。この考察はかなり妄想に近い内容となっているため、実際に上の数値を再現しようとすれば、精神と肉体はすり減り、勉強のために多くの時間を費やすことから、再現性の無さが予想されます。
他にも資格はあるのですが、業務範囲が重なる資格を取得する方もいるので、その場合は上述のようなケースには当てはまりませんし、掛かるコストを支払うことはかなり難しくなります。
知人などで、複数の資格を取得する人は、学費などを保護者に負担してもらっているので、実質的に本人が被っているコストがゼロということもありますが、稀に自分の資金で取得する人もいます。
著者の考えとして、「資格」はその業界に必要なパスポートみたいなもので、収入を上げるために取得するものではないと思っています。多くの業界の人らは何等かの資格を持って経営しているのか?ということも調べてみると面白いです。
そして、整骨院などを経営したければ、柔道整復師の資格を取得しなくとも経営できるので、経営などに興味がある人はこれらの資格を取らないとも思います。
多くの人は、何らかで患者に喜んで欲しい、という気持ちを基に資格を取得して業務にあたっていると思うため、やや無粋な内容となり申し訳ございません。
今から、別の医療系資格を取得しようか悩んでいる人は、コスト計算や収益なども計算のうちに悩んでみると、案外スッキリするかもしれません。