食事の違いによる骨折リスクの差
菜食主義者、完全菜食主義者、非菜食主義者の間で骨折リスクについての前向きな研究らによる証拠は限られており、肉を食べない人の割合が高い前向きコホートでこれを研究することを目指していたものを紹介します。
EPIC-オックスフォードでは、
食事情報はベースライン(1993–2001)とフォローアップ(≈2010)で収集され、参加者は両方の時点で4つの食事グループに分類されました。
(総骨折の分析では、
・29,380名の肉食者
・8037名の魚食者
・15,499名の菜食主義者
・1982名のビーガン
転帰は、2016年半ばまでの病院の記録または死亡診断書へのリンクを通じて特定され、多変量Cox回帰を使用して、合計(n = 3941)および部位固有の骨折のリスクを推定しました。
結果として、
肉を食べる人と比較して、社会経済的要因、ライフスタイルの交絡因子、BMIの調整後、股関節骨折のリスクはビーガンの人は、肉を食べる人よりも脚やその他の主要な部位の骨折のリスクが高いことがわかりました。
全体として、有意な関連性については、BMIを調整しないとより強くなるように見え、わずかに弱められましたが、食事中のカルシウムおよび/または総タンパク質をさらに調整しても有意なままとなりました。
Tong, T.Y.N., Appleby, P.N., Armstrong, M.E.G. et al. Vegetarian and vegan diets and risks of total and site-specific fractures: results from the prospective EPIC-Oxford study. BMC Med 18, 353 (2020). https://doi.org/10.1186/s12916-020-01815-3
まとめ
変数を考慮しても、ビーガンの人は肉を食べる人より股関節などの骨折リスクが高いという結果になりました。BMIによる影響は強いとのことですが、ホルモンバランスとしてもビーガン食を続けている人にとって、耐衝撃性に対して弱くなることが考えられるため骨折するということです。
しかし、対象となったビーガングループのBMI値で標準値よりも高い人は少ないとのことなので、心配が少ないのか?というとそうでもなく、比較された場合のビーガンの人らは筋肉量が少ないという結果もありました。筋肉量が少なくなることで、高齢化した時の転倒リスクも増加し、骨折するリスクが高いとのこと。
さらにメタアナリシスによれば、食事性のカルシウムの摂取により、骨密度が増加することもわかっているため、牛乳やサプリメントなどによる補充をすることが望ましいのではないかと言われていました。
別の研究ですが、以前タンパク質を過剰に摂取すると骨密度が低下することが述べられていたようですが、最近の実験証拠によれば高タンパク質食は腸内のカルシウム吸収効率も上昇することから、タンパク質を多めに補充することも推奨はされていますが、疫学的には骨粗鬆症と高タンパク質食の関連性が証明されていないため、タンパク質を多めに摂ることが骨密度を改善できるのかは一端保留していた方が良さそうです。
この結果は、そういったタンパク質による調整やカルシウムによる調整を行ったとしても、ビーガン食の人の骨折リスクは有意に高い結果となっていました。
何かに偏るということは、何らかの弊害があるのかもしれない、ということを考慮しながら食の内容を決定するべきなのでしょうね。