今回は頚部痛と前かがみな首の位置について
整体などで頚部痛の相談をすると、「姿勢」が原因であることを説明されると思います。
私自身も整骨院で勤めていた際に、そこの方針で頚部痛と姿勢との関連性を説明するように教育されました。
解剖学的にも分からなくもないのですが、単純に導き出せるものでもないのが人の体です。
そういった疑問に応えてくれる?研究の結論を紹介します。
研究の内容
前方に変位した頭部の姿勢(FHP)と筋肉の機能障害は、慢性的な首の痛み(CNP)の要因である可能性がありますが、これらの要因と臨床CNPの特性との関連性については一貫性のない所見があります。
FHP、頸部の筋肉のサイズとCNPと無症候性の参加者の持久力を比較し、痛みと障害、および深部/表在性と屈筋/伸筋の相対的な関与との関連を調査した研究となります。
研究では、CNPをもつ患者32人と、無症候性の参加者35人が対象となりました。
立位、伸筋、屈筋の持久力と寸法におけるFHPは、それぞれデジタル写真、臨床検査、超音波画像を使用して評価されました。
視覚的アナログ尺度と首の障害指数も使い、CNP患者の臨床的特徴を評価しました。
結果によれば、深屈筋と伸筋のサイズは、CNP患者だと有意に小さいことがわかりました。
CNP患者は、低いレベルの屈筋と伸筋持久力を示しました。
FHPはグループ間で差がなく、従属変数のいずれとも相関していませんでした。
FHPも持久力も痛み/障害と相関していませんでした。
両方のグループの伸筋持久力と無症候性グループの屈筋持久力は、筋肉のサイズと有意な相関を示しました。
よって、FHPはグループ間で差がなく、筋肉のパフォーマンスやCNPの臨床的特徴と相関していないことがわかりました。
頸部の筋持久力はCNP患者の方が低いことがわかりましたが、痛みや障害との関連は見られませんでした。
筋肉のサイズと持久力の関係は、NPの存在下でより複雑になるようです。
深部の筋肉はCNPの存在下で異なった影響を受けるように見えますが、変化は屈筋群と伸筋群で均一ではないようです。
考察
頭部の前傾姿勢により、頚部痛との関連性はなかったとのことですが、筋持久力などの違いはあることがわかりました。
関連性については、"全く"ないというよりは、多少は関係してくるケースも報告されていましたが、痛みと障害の強度の1割ほどの関係性と示唆する研究結果もあります。
これらのことから、姿勢に拘るよりは筋力の活性化に着目した方が良いということがわかります。
筋サイズなどの違いもわかっていましたが、筋サイズが実際の頚部痛に直結する証拠はありません。
弱いなら鍛えれば!と考える人もいるかもしれませんが、肥大化したからとて頚部痛が軽減するかは不明です。
それよりも、筋持久力などの低さに着目し、どの筋群を活性化するかを特定し治療介入した方が、臨床的にも有意義と言えます。
まとめ
姿勢が悪いから頚部痛が治らない、という認識は一度忘れた方が良いのかもしれないことが示唆される結果となっていました。
別の記事でも書きましたが、こういった内容が示されたとしても、頑なに自身の臨床を絶対と信じてやまない人や、患者の支持が得られずに不本意な治療介入をすることは珍しくはありません。
それらは、関わり方ひとつで変えることではありますので、相手の人格を否定しないように変更してみてください。
Ghamkhar L, Kahlaee AH. Is forward head posture relevant to cervical muscles performance and neck pain? A case-control study. Braz J Phys Ther. 2019;23(4):346-354. doi:10.1016/j.bjpt.2018.08.007