今回は肩甲骨の柔軟性と肩部痛について
整体などでは、肩部痛があると肩甲骨の可動域が低下していることを理由に、肩甲骨剝しなる手技を行ってきます。
何処から流行ったのかはわかりませんが、肩甲骨に注目した流れは様々な業界に影響し、肩部痛を診るときに肩甲骨の可動域を確認するようになりました。
運動学的にも肩甲骨の可動域と、上腕骨の可動性の連動が示されていることから、肩甲骨が動きにくなれば上腕骨の可動性も低下し、そこから障害が発生すると考えられています。
分からなくもない話ですが、果たしてそういい切れるものなのか?ということに答えをくれる研究結果がありました。
研究の内容
多くの研究で、軟部組織の緊張と肩の運動学との関係が調査されていますが、肩甲骨の非対称性などの左右の違いの原因となる動的特性に関する情報が不足しています。
研究の目的は、軟部組織の柔軟性の不足と肩甲骨の非対称性との関係を判断することです。
研究は、肩の痛みを伴う29人の患者と、29人の無症候性の人を対象としました。
評価として、小胸筋の両側の短縮と肩後部の緊張を評価しました。
さらに、左右の柔軟性の低下を計算し、静止位置にある時、腕を上げている時に、電磁追跡装置を使用して測定されました。
また、肩甲骨の非対称性を定量化するために対称角を計算しています。
柔軟性の低下は、無症候の人と痛みがある人とで確認され、小胸筋と肩後部の柔軟性の低下、肩甲骨の非対称性と関連していたことが示されています。
但し、両郡の柔軟性の欠如と肩甲骨の非対称性の間に有意な関係は見つかりませんでした。
結果として、軟部組織の柔軟性の低下と肩甲骨の非対称性は認められたが、それと疼痛の関係性に因果関係があるのかを証明することは出来なかったということです。
考察
今回の結果では、参加者を静的な位置にて測定した結果こうなったものです。
動的なものではないため、動的な違いがあるのかどうなのかは追及する必要があるということ。
これらから臨床で活かすには、評価方法の再検討が必要であることと、静的な位置よりも動的な要因を検討し、筋活動を促進する方が有用なのかもしれないということ。
簡潔に述べると、静的な姿勢を評価し、矯正することが巷で流行っていますが、肩部痛とこれらが一致し、静的な肩甲骨の位置を調整したとしても肩部痛が除去できるとは限らないということです。
まとめ
肩甲骨の位置や非対称性と肩部痛の関連があるかどうかは別の話ということでした。
しかし、実際に肩甲骨の違いは出ているので調整が必要なのであれば、手技的なもので調整するよりは、筋収縮を促したり、神経筋トレなどで活性化させる方が良いのかもしれません。
巷の姿勢矯正はビジネス矯正なのかも?
Turgut E, Baltaci G. Effect of flexibility deficit on scapular asymmetry in individuals with and without shoulder pain. Braz J Phys Ther. 2018;22(5):370-375. doi:10.1016/j.bjpt.2018.03.007