今回はCOVID-19による睡眠障害の症例について
症例
・49歳の女性(医療従事者)
・高血圧、糖尿病、発作性心房細動を伴う虚血性心疾患の病歴
発熱、乾性咳嗽、頻呼吸、水様性下痢、倦怠感、関節痛、筋肉痛とあったため、大学病院の隔離救急科に転院してきました。
前の病院に入院している間に、38.5〜39°Cの発熱があり、鼻咽頭の灼熱感と喉の痛みを伴う乾いた咳が出るようになり、全身、特に上肢の関節や筋肉にひどい苦痛を伴う痛みを引き起こしていました。
これに対して、抗生物質、解熱剤、鎮咳薬の投与による治療が提供されました。
投薬を開始してから、鼻出血、血が混じった痰、重度の食欲不振、味覚と嗅覚の喪失を発症しました。
その間に睡眠障害を経験したことも報告されています。
不眠症による睡眠の質の悪さがありましたが、足を動かしていくらか改善したという経験があり、むずむず脚症候群の兆候が確認されました。
そうしたことから、彼女の意志により冒頭にあった病院に転院されました。
隔離病棟に転院された時にはしたときには39°Cの発熱と頻呼吸があったため、精密検査が行われました。
臨床的所見によれば、異常や神経学的な異常は見られませんでした。
CTスキャンでは、両側間質性肺胞性肺炎が確認され、検査室での分析結果で赤血球沈降速度がわずかに上昇し、ヘモグロビンレベルの低下を除けば他の数値は正常であることが明らかになりました。
フェリチン、D-ダイマー、C反応性タンパク質のレベルは正常となり、酸素飽和度は97%です。
さらなる曝露を防ぐために、EEGと睡眠ポリグラフ検査は除外されました。
入院中、オセルタミビル75mg、亜鉛ビタミン、ビタミンC 5oomg(それぞれ12時間ごと)の投与を10日間行い、48時間ごとにPCR検査を繰り返し、治療の4日目には不眠症が改善されました。
5日後には臨床的改善と連続したPCR検査で陰性となったため退院しました。
考察
睡眠障害とCOVID-1の相互作用はまだ解明されていません。
この症例では睡眠障害を呈したCOVID-19感染を表現したものとなります。
睡眠は、神経伝達物質、免疫学的に活性なペプチド、ホルモン間の複雑な相互作用によって調節される基本的な現象となります。
睡眠と免疫システムは双方向に関連しておりますが、これらが影響されるメカニズムは完全には解明されていません。
仮説として、感染中の睡眠の変化は急性期反応の構成要素であり、おそらくサイトカインとインターロイキンとそれらの受容体、および自然免疫系の受容体が関与するメカニズムを通じて、病気の間の回復を促進することを示唆しているものがあります。
結果として生じるこれらの免疫学的メディエーターの分泌は、コルチゾールおよびエピネフリンの分泌などの内分泌系、神経系による応答を伴なっています。
これらの物質は、血液脳関門を通過してさまざまな神経構造の受容体に到達するか、恒常性を維持する応答を調節する迷走神経入力を持っている可能性があります。