今回は腰椎すべり症と運動恐怖症について
皆さんは腰椎すべり症になったことがありますか?
学生時代にスポーツ競技などの活発な動作の繰り返しの果てになったりする症状なのですが、臨床上では慢性腰痛と区別が難しい症例です。
慢性腰痛と似たような状況なので、何かしらのきっかけで痛みが起きる症状があるのですが、現状では痛みが出ない範囲で運動を行うように指導されることも多くあります。
そんな中に運動恐怖症というものがあり、それによりどのようなことが起こるのか?ということがわかる研究を紹介します。
研究の内容
痛みと低い自己効力感に起こる運動恐怖感は、腰痛(LBP)を訴える患者の予後に関連しているようです。
文献によれば、心理的プロファイルに対する解剖学的欠陥診断(例えば腰椎すべり症)の潜在的な悪影響を強調しています。
この研究の目的は、脊椎すべり症の認識、痛みの自己効力感、運動恐怖症の関係を調査することです。
二次後ろ向き分析が行われました。
亜急性および慢性LBPの98人のうち、症候性腰椎すべり症と診断された49人の被験者と非特異的LBPと診断された49人の被験者が対象となっていました。
痛みの自己効力感アンケートで測定された痛みの自己効力感と運動恐怖症のタンパスケールで測定された動きの恐怖は調査する変数と見なされ、診断と人口統計学的/臨床的変数は予測因子または潜在的な交絡因子と見なされました。
結果として2つのグループを比較することにより、脊椎すべり症の認識は、痛みの自己効力感(p = 0.82)にも運動恐怖症(p = 0.75)にも有意な影響を与えませんでした。
知覚される痛みが高いと、両方のグループで痛みによる自己効力感の低下が起き、運動恐怖症が増加します(それぞれp = 0.002およびp = 0,031)。
解説
研究の内容として、慢性腰痛を訴える人に"腰椎すべり症"が原因となる腰痛だったことを診断された人と、非特異的腰痛だった人で心理的側面に変化が起き、運動することに後ろ向きになってしまうのか?を調査したものとなりました。
結果として、どちらのグループも痛みにより自己効力感が低下し、運動に対して後ろ向きになるといったものでした。
患者としては、解剖学的な要因が判明することに対して、"原因が知る"ということが運動することにあまり影響が無いように思えるのかもしれません。
優先されるのは、原因や運動よりも、現状にある"痛み"を何とかしたいのであって、痛みが解決してから痛みを回避するための行動へと移行するのは先の話のようです。
医療従事者には、原因を追究して、原因に対して適切な治療を施す目的の人もいれば、原因はわからないけど、患者に寄り添って痛みを何とかしたい、と両極端な人もいます。
どちらかに振り切ると極端な行動しか取らなくなるので、一長一短のようになってくるのでしょうが、今回の研究からは運動恐怖症というものがあり、運動療法の妨げになる可能性があるということを知ることが出来る、ということが重要です。
まとめ
慢性腰痛に苦しむ人は、自己効力感が低下し、運動に対して後ろ向きになる運動恐怖症というものを知る研究となりました。
医療従事者の人は、このことを念頭に置かねばならないときが、いつ何時来てもいいように対策しましょう。
Ferrari S, Striano R, Lucking E, Pillastrini P, Monticone M, Vanti C. Does the awareness of having a lumbar spondylolisthesis influence self-efficacy and kinesiophobia? A retrospective analysis. Arch Physiother. 2019;9:16. Published 2019 Dec 16. doi:10.1186/s40945-019-0070-7