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医療従事者なら知っていたい整形外科徒手検査法について

Wednesday, March 10, 2021

医療基礎知識



 医療従事者なら知っていたい整形外科徒手検査法について


徒手検査法の感度、特異度、陽性・陰性的中率などなど


はじめに、整形外科徒手検査法は病態を100%判断できる「完全な検査」というものは存在しません。

この検査は闇雲に実施されるべきではなく、必要な検査のみを実施するべきである。

しかし、検査がもつ有用性を十分理解していない医療従事者は、「陽性所見=異常」と判断されることも多く、実施するにあたって各種検査の持つ感度、特異度などについて知る必要があります。




感度とは?


検査の診断性能の指標の1つで、「見落とし」の少なさを示すものです。

ある症状を有する患者において、検査で「陽性」と判断される割合のことをいい、「真陽性率」とも呼ばれる。

感度が高い検査は、症状の有無で陽性と陰性とするのではなく、
「症状がある人もない人も、どちらも陽性になりやすい」

これは、言い換えると陰性になりにくいということで、
「陰性の場合は該当疾患を除外できる。」


特異度とは?


検査の診断性能の1つで、過剰診断の少なさを示しています。

症状を有さない健康な人において、検査で陰性と判断される割合のことを言います。

特異度が高い検査では、症状がない人のみを陰性とし、症状がある人を陽性と判断するものではありません。

症状がない人もある人も、どちらも陰性となりやすいということ。

したがって陽性になりにくい検査で、陽性の結果が得られた場合、
その疾患である可能性が高いと言えます。


陽性的中率と陰性的中率


陽性的中率とは、検査結果が陽性であった患者が実際に疾病を持つ確率のこと。

陰性的中率とは、検査結果が陰性であった患者が実際に疾患を持たない確率のこと。

※陽性的中率(PPV:positive predictive value)
 陰性的中率(NPV:negative predictive value)と表記されていることもある。


検査前確率と検査後確率


検査前確率とは、検査を実施する前にその疾患をもつと予想される確率のこと。

有病率を示していると理解されていることもありますが、検査前に情報がなく、検者の経験もないような場合のことに限られる話です。

よって、検査前確率が高くなる状況は、検査前に問診などにより情報を得て、検者の経験と組み合わせて基づくものである。

検査前確率が高くなれば陽性率が高くなり、低くなれば陽性率も低くなる。

検査後確率とは、検査の結果で特定の疾患があるという確率のこと。


尤度比(ゆうどひ)


尤度比とは、疾患をもつ人が、もたない人と比べて検査結果が得られる可能性がどれぐらい高いかを示すもの。

所見が陽性、陰性のときの「尤(もっと)もらしさ」を表しています。


陽性尤度比は、疾患を持つ人が陽性となる可能性と、疾患をもたない人が偽陽性となる可能性の比で計算されます。

陽性尤度比が高いほど検査結果が陽性の場合、疾患があることを肯定する可能性が高くなります。

陰性尤度比は、疾患を持つ人が陰性になる可能性と、疾患をもたない人が偽陰性となる可能性の比で計算されます。

陰性尤度比が0に近いほど、検査結果が陰性の場合、疾患があることを否定する可能性が高くなります。



検査を行う際の注意事項


⑴症状を誘発する検査が殆どであるため、事前に十分な説明が必要である。
⑵強すぎる圧や力を使用しない。
⑶診断行為をしない(医師以外の場合)
⑷十分に練習し、熟練者からの指導を受けたうえで実施する。



解説


⑴は、説明をせずに実施した場合、症状の増悪が起こり得て、最悪の場合医療訴訟となる可能性がある。

検査方法に限ったことではありませんが、十分な説明をしたうえで同意をとることが求められています。



⑵は、当検査法では、対象組織などに生じている問題を明確にするために、該当部位に直接、間接的に圧や力を加えます。

強過ぎたりすると、必要以上に症状を誘発させ組織を損傷させる危険性があります。

そして、メカニカルなストレスを他動的に加えるものが多く、検者が患者を傷つけてしまう可能性もあることを十分に理解する。


⑶は、診断行為ができるのは医師のみであり、他の医療資格者が患者に対し、徒手検査方法を実施したとしても「○○症です」「〇〇症ではありません」という診断は医師法違反となります。


⑷は、検査方法自体がメカニカルなストレスを加えることが多く、十分な練習を重ねないと適切な検査結果はおろか、組織を損傷させつ可能性もあります。

そして、練習する際は検査に熟練した者から指導を受けるべきであります。



こういった環境下に無い人は、検査をやるな!というわけではなく、各検査法の目的、方法、ポイント、よく起こり得るミスを十分に把握する必要があります。




医療従事者KeiSのはなし


普段、検査法にコツってありますか?と聞かれることがあります。

コツといっても検査を適切に行うだけで、練習の積み重ねが重要ということをいつも伝えています。

しかし、これらの検査には感度や特異度など、検査がもつ目的や特性などを把握せず実施している人は、陽性=症状がある、という短絡的な答えを発する人が多いということを知りました。

このことは、現場に出てからすぐに感じたことであり、何故柔道整復師が医療過誤を起こしているのか?という疑問にも1つの答えが出ました。


検査法を練習していないというわけではなく、正しく検査法を練習することを行っていない人は、前述したことに当てはまることが多い印象です。

このページでは、感度や特異度など各検査がもつ数値などは記載していませんが、注意点などを述べていきます。

検査法については、調べたら幾らでも見つかるご時世ですので、割愛しております。






 足関節

主訴別に実施される徒手検査法を紹介します。


足関節外側が痛い場合




前距腓靭帯が原因となるケース


・anterior drawer test(前方引き出しテスト)


前距腓靭帯損傷と、距腿関節の構造的不安定性の検査。

外果の前に窪みが出現し、前方移動量が大きい場合を陽性所見とする。

研究によって評価精度が一定していないため、単独で用いることに限界がある。
しかし、疼痛や血腫形成と複合的に評価すれば、損傷の有無を検出できる可能性もある。


・anterolateral drawer test(前外方引き出しテスト)


前距腓靭帯損傷と、距腿関節の構造的不安定性の検査。

検査側が反対側と比較して、前方移動量が大きいと陽性とする。



踵腓靭帯が原因となるケース


・inversion stress test(内返しストレステスト)

踵腓靭帯と前距腓靭帯損傷と、距腿関節、距骨下関節の構造的不安定性の検査。

比較して内返し角度が過大であり、10°以上の患健差がある場合に陽性とする。

検査の特異度が高いことから、陽性の場合は対象組織の損傷を判断することに有用ではあるが、感度が低いため陰性となっても損傷を否定する可能性は低い。


・medial subtalar glide test(距骨下関節内側滑りテスト)

距骨下関節の不安定性の検査。

踵骨の移動量を4段階で評価し、左右差を認めた場合陽性とする。




足関節前部が痛い


前下脛腓靭帯が原因となるケース


squeeze test


前下脛腓靭帯損傷の検査。

脛腓靭帯結合領域に痛みが発生し、陽性の場合は対象靭帯の損傷を疑う。

特異度が高いため、陽性であれば損傷している可能性は高いため、判断するには有用である検査。

しかし、感度は不十分なため、本検査で陰性となっても損傷を否定できる可能性は低い。


kleiger test(背屈外旋テスト)


前下脛腓靭帯損傷の検査。

遠位脛腓靭帯結合領域に痛みが発生する。




足関節後部が痛い


アキレス腱が原因となるケース



Thompson test

アキレス腱断裂の検査。

下腿後面を圧迫した際に、足関節が底屈しなければ陽性、何らかの損傷の可能性があります。

感度、特異度が高い検査のため、陽性であればアキレス腱断裂の可能性が高く、陰性であればその可能性は低い検査法。



Matles test


アキレス腱断裂の検査で、足関節底屈位を保てずに背屈位や中間位になると陽性。




足底が痛い


足底腱膜が原因となるケース



windlass


足底腱膜炎の検査。

中足趾節関節を伸展させた際に、足底筋膜領域、踵骨側の足底筋膜付着部に疼痛がある場合陽性となる。

陽性の場合は足底腱膜になんらかの損傷の可能性があり、特異度が高いため、陽性の場合は足底腱膜炎の可能性が高い。

しかし、感度が不十分なため、本検査で陰性となっても足底筋膜炎を否定できる可能性は低い。


dorsiflexion-eversion test


足根管症候群の検査であり、ウィンドラステストと検査肢位が酷似するため注意が必要。

疼痛の誘発や増強、痺れの増強が再現された場合、足根管症候群が疑われる。

また、検査肢位にて足根管領域を叩打するとTinel徴候や圧痛の発生がある。






膝の痛みや不安定感



膝蓋骨が原因となるケース



patella apprehension test


膝蓋骨の異常可動性の検査。

健側と比較して可動性が大きい、膝蓋骨の外側への可動性が大きく、膝蓋骨が外れるような不安感がある際は陽性。

本検査の感度は不十分であり、陰性であっても膝蓋骨亜脱臼の可能性は低く、陽性であっても否定はできないため他の検査と併せて実施する必要性がある。



前十字靭帯が原因となるケース


Lachman`s test


前十字靭帯(特に後外側線維束)損傷の検査。

エンドポイントが不明瞭であり、健側と比較し可動性が大きい際は陽性となる。

陽性の場合は以下の構成体に何らかの損傷の可能性がある。

・前十字靭帯
・後斜走靭帯
・弓状靭帯ー膝窩筋複合体


感度、特異度とも高く、陽性の場合はACL損傷の可能性が高く、陰性の場合はACL損傷を否定できる可能性が高い。

また、他の前十字靭帯の検査と比較しても高感度の検査であります。



anterior drawer test(前方引き出し)


ACL損傷を調べる検査。

健側と比較して、脛骨が前方へ動く可動性が大きい場合は陽性である。

本検査は特異度が高い。

pivot shift test


ACL損傷を調べる検査。

膝関節30°屈曲位付近で、ガクッと脛骨外側関節面が前内方に滑り、亜脱臼を触知すれば陽性。

また、さらに屈曲すると40~60°で弾発と共に急に整復されることも特徴。

本検査の特異度は高い。




後十字靭帯が原因となるケース


posterior drawer test(後方引き出し)


後十字靭帯損傷の検査。

健側と比較して、脛骨後方への可動性が大きい際は陽性。

感度は疎らであり、特異度が高い。

本検査で陰性の際は、PCL損傷を否定できる可能性が高く、陽性であればPCL損傷の可能性は高い。

また、他の検査(gravity test)と併せて行うことはPCL損傷の有無を判断するのに有用であるとの報告も。




内側側副靭帯が原因となるケース


valgus stress test(外反ストレス)


内側側副靭帯損傷の検査。

膝関節内側に疼痛が誘発され、健側と比較して可動性が大きい際は陽性。

また、陽性の際は以下の構成体に何らかの損傷の可能性がある。

・前十字靭帯+内側側副靭帯(伸展位で検査した際)
・内側側副靭帯(20~30°屈曲位で検査した際)

感度が高いとされているものの、特異度に関する報告はないとのこと。

本検査で陰性であれば、MCL損傷を否定できる可能性が高いが、陽性であっても確定は出来ないため、他の検査と組み合わせる必要がある。



Apley distraction test


MCL損傷の検査。

膝関節内側部に痛みが生じ、健側と比較して、下腿に過度な外旋運動が生じる際は陽性。





外側側副靭帯が原因となるケース


varus stress test(内反ストレス)


外側側副靭帯損傷の検査。

膝関節外側部に疼痛が誘発され、健側と比較して可動性が大きい際は陽性。

陽性の場合、以下の構成体に何らかの損傷の可能性がある。

・前十字靭帯+外側側副靭帯(伸展位で検査した際)
・外側側副靭帯(20~30°屈曲位で検査した際)

感度が不十分であり、特異度に関する報告はない。

本検査で陰性であってもLCL損傷を否定できず、陽性であっても確定は出来ない。

そのために、他の検査と組み合わせて判断する必要がある。



半月板が原因となるケース



Apley compression test


半月板損傷の検査。

膝関節部に疼痛が誘発され、健側と比較しても可動性が小さい際は陽性。

陽性の場合、以下の構成体に損傷の可能性があります。

・外側半月板(下腿内旋)
・内側半月板(下腿外旋)

特異度はやや高いが、感度が不十分である。

本検査で陽性であれな損傷の可能性は高いが、陰性であっても損傷を否定することは出来ない。


McMurry test


半月板損傷の検査。

膝関節最大屈曲位から伸展させている間に疼痛が誘発される、または関節裂隙にあてた手指によってクリックが触知された際は陽性。

特異度はやや高く、感度が不十分であるため、陽性であれば損傷の可能性があり、陰性であっても損傷を否定することは出来ない。



腫脹があるケース


wipe test


膝関節内に、水腫や血腫などの貯留液があるかどうかを調べる検査。

膝蓋骨内側が浸出液によって膨隆していれば陽性。

感度と特異度に関しては検証の報告がなく、この評価の有用性を高めるためには他の検査と組み合わせが必要となる。


※通常、膝関節内には滑液(1~7ml)が存在し、本検査では4~8mlの浸出液の貯留を評価することが可能とされてはいる。





股関節が痛いなど





股関節が伸展できない



股関節屈筋群が原因となるケース


Thomas test


股関節屈筋群の伸張性の検査。

検査側下肢が挙上すれば陽性となり、屈筋群の伸張性が低下していると判断できる。

制限角度を検査する際は、検査側の大腿骨長軸と床面とで構成される角度を確認する。


検査の精度に関して、脳性麻痺の小児と健常児を比較し検査したところ、級内相関関係数の数値が低い結果もある。

そのため、再現性の高い評価を行うためには、非検査側の股関節の屈曲角度や骨盤の後傾角度を規定して行う必要がある。



大腿直筋が原因となるケース



Ely test

大腿直筋の伸張性の検査。

検査側臀部の浮き上がりが生じた際に陽性。


検査の精度に関しては、級内相関係数は中等度なため、骨盤前傾などの代償作用が生じないように注意が必要である。

尚、この精度について健常児を対象にした報告はない、という補足点もある。




股関節と臀部が痛い


※股関節屈筋群が原因の際はThomas testを行う。


股関節内組織、仙腸関節が原因となるケース



Patrick test


仙腸関節障害もしくは股関節唇損傷の検査。

検査側の仙腸関節や臀部に痛みが生じた際は陽性。


感度は比較的高いが、特異度については報告によって幅がある。

そのため、システマティックレビューで

・compression test
・distraction test
・Gaenslen`s test
やPatrick testなどの仙腸関節疼痛誘発テストを3つないし、それ以上の検査で陽性所見が得られることで仙腸関節由来の疼痛と判断することが妥当とされている。



臀部・下肢の痛みや痺れ


梨状筋が原因となるケース


flexion adduction internal rotation test (FAIRテスト)


梨状筋症候群の検査。

検査側の臀部から下肢に放散痛が生じた際は陽性。

FAIR肢位において、脛骨神経、腓骨神経のH反射の遅延を判断基準とした研究では、感度は高いが特異度は不十分なものとされている。

そのため、陰性であれば梨状筋症候群を否定できる可能性はあるが、偽陽性の可能性もあるため、他の検査と併せて行うことが望ましいとされる。








骨盤帯痛・骨盤部の不安定感



仙腸関節機能不全が原因となるケース


distraction test(離開)

仙腸関節前方部の離開、後方への圧迫ストレス時の疼痛を誘発させる検査。

仙腸関節に疼痛がでれば陽性。


感度に関しては何とも言えませんが、特異度の高い評価。

陽性となれば仙腸関節由来の疾患である可能性があり、有用性の高い検査法といわれています。

他の仙腸関節を評価する検査と組み合わせることは精度向上にもなる。



posterior shear test(大腿スラスト)

仙腸関節後方への剪断ストレスによる疼痛を誘発する検査。

これも仙腸関節に疼痛がでれば陽性。

感度、特異度とも高い検査であるため、スクリーニングにも適している検査法。



compression test


仙腸関節前方部への圧迫、広報部の離開ストレスによる疼痛を誘発する検査。

これも仙腸関節に疼痛がでれば陽性。


感度に関しては、骨盤帯症候群に対しては高いが、仙腸関節症候群には不十分な結果があるため、陽性となれば骨盤帯症候群や仙腸関節症候群の可能性はある。

しかし、有用性として、骨盤帯症候群に対しての話であり、仙腸関節症候群に対しては不十分な感度であるため、他の検査と組み合わせる必要はある。

特異度に関しては高いため、前述のような評価とされています。


pelvic torsion test(Gaenslen`s test)


寛骨の前・後方回旋時の不安定性による仙腸関節の疼痛を誘発する検査。

仙腸関節に疼痛がでれば陽性。

感度と比較すると特異度が高い検査なため、陽性であっても仙腸関節機能異常を有していると確定することは出来ない。

しかし陰性尤度比が低いため、仙腸関節機能障害がない患者では陽性が出ることが少ないことから、本検査で陽性の際は仙腸関節由来の症状の可能性はある。



sacral thrust test


仙腸関節に剪断力を加え、疼痛を誘発する検査。

こちらも仙腸関節に疼痛がでれば陽性。

感度が不十分なのに対し、特異度は高いため、誤って陽性と判断されることは少ない。

しかし、陽性尤度比と陰性尤度比が低いことから、検査の有用性が乏しいため、他の検査結果と組み合わせることで仙腸関節機能異常と判断する精度が高くなる。




骨盤帯の荷重伝達不全が原因となるケース


active straight leg raising test(ASLR,自動下肢伸展挙上)


寛骨の不安定性、体幹と下肢の荷重伝達の能力を評価する検査。


本検査は点数で陽性かどうかを判断する。

1点以上の場合は陽性。

0:できる
1:少しできる
2:まぁまぁできる
3:難しい
4:結構難しい
5:出来ない

??ってなりました。(個人的感想)

感度より特異度が高いため、陽性であれば寛骨の不安定性や荷重伝達能力に問題がある可能性が高い。





腰椎


下肢が痺れたり痛い


神経系の異常が原因となるケース


slump test

神経原性の疼痛を判断するための検査。

スクリーニング、神経線維の評価目的でも実施される。


下肢への放散痛や顕著な左右差がみられる際は陽性。

但し、軟部組織の緊張による痛みと区別する必要がある。


本検査は感度、特異度とも高い(文献によって差はあるが)
陰性であれば神経原性の可能性は低いため、スクリーニング検査としても有用である。


straight leg raising test (SLR)


末梢神経が関与する疼痛なのかをスクリーニングする検査。

また、検査の目的としては下記の場合も含まれる。


・妊娠時の腰痛患者に対する骨盤輪の疼痛誘発評価

・椎間板の不安定性由来の腰痛を再現するため

・脳血管疾患患者に対して、麻痺側の歩行能の予後を予測するため

・変形性膝関節症患者に対して、人工膝関節置換術の低侵襲性を証明するため

・腰下肢痛や坐骨神経痛の再現のため

・股関節痛を再現するため

・スポーツ選手の柔軟性を評価するため


これらは自・他動挙上とで条件を設定し実施する。


下肢への放散痛がみられれば陽性となる。

感度は高いが特異度が不十分なため、他の検査と組み合わせる必要がある。

本検査で陰性の場合、坐骨神経過敏である可能性は低い。


Kemp test


腰椎椎間関節の疼痛誘発、神経根刺激による下肢症状の再現を目的とした検査。

腰部に局所性の疼痛、下肢への放散痛がみられた際は陽性。


感度と特異度に関するエビデンスはなく、かく報告で疎らな数値結果が出ている。

ある検査によると、感度が高いため陰性の際は、腰椎椎間関節由来である可能性が低いという見方もある。



脊柱の過可動性が原因となるケース


kemp test

前述と同じく


passive physiological intervertebral movement(腰椎他動運動テスト)


腰椎の他動的な過・低可動性の評価を目的とする。

腰椎の各分節にて、過・低可動性がみられた際は陽性。

本検査の感度は不十分であるが、特異度は高い。

そのため、陽性であれば可動性の異常がある可能性は高いが、陰性であっても異常性を否定できる可能性は低い。

尚、評価に関して、検者の感じ方によって左右されるため練度が高い必要がある。


spring test

腰椎分節の可動性、疼痛をみる検査。

検査肢位にて動きや疼痛の有無を確認するテスト。


prone lumber instabillity test


スタビライゼーションエクササイズが有効であるかどうかを調べる検査。

検査肢位にて疼痛の有無を確認できれば陽性。

尚、感度と特異度に関する報告は多くないため、一部の報告によれば両方とも不十分な精度なため別の検査と組み合わせる必要があるとのこと。


例)

・motor control test
・passive physiological intervertebral movment
・passive lumber extension test



脊柱の低可動性が原因となるケース


kemp test

前述と同じ

spring test

前述と同じ



不安定性が原因となるケース


spring test

前述と同じ


prone lumber instabillity test

前述と同じ


motor control test

腰椎のモーターコントロール不全をスクリーニングする検査。

動作中の疼痛、逸脱した動きを生じた際に陽性。

感度と特異度に関する報告はない。

また、ある検査によれば、腰痛の患者に対して陽性となる割合は2.21/6であるそう。





頸椎編


上肢の痛み、痺れ、力の入りにくさなどの訴え



頸椎が原因となるケース


Spurling`s test


頸椎神経根症の検査。

側屈側の上肢に疼痛や放散痛が認められれば陽性。

感度については、疎らな報告のみであり、特異度が高いため、陽性の際は頸椎神経根に問題が起きている可能性が高い。

しかし、陰性であっても頸椎神経根の障害を否定できるわけではないため、他の検査と組み合わせる必要はある。



sharp-purser test


頚部の不安定性の検査。

頚部屈曲時に症状が誘発され、背側への力を加えた際に症状が軽減した際は陽性。

この場合は上位頸椎の不安定性を疑う。

感度が不十分だが、特異度が高いため陽性の際は頚部の不安定性の可能性が高い。

しかし、陰性であっても不安定性を否定することはできない。

※感度、特異度に関する報告資料はリウマチ患者を対象にしているため、別の症状で適応するのかは確認が必要となる。

そもそも環軸関節亜脱臼はリウマチ患者に多いため、この検査が施行されることが理由となります。



cervical torsion test


頚性目眩の検査。

いずれかの肢位で1秒間に2°以上の眼振が出現する、或いは目眩、視覚異常、言語障害、乗り物酔いのような感覚、吐き気、不明瞭な発語、嚥下障害、意識朦朧、耳鳴り、頭痛、知覚異常などが起きれば陽性となる。

感度、特異度と共に高いため、陽性の際は頸椎由来の症状である可能性が高い。



神経根が原因となるケース


Spurling`s test


前述と同じ


upper limb neuro-dynamics test


頸椎神経根症、腕神経誘発、末梢神経の感作の有無を特定する検査。

以下の事柄で陽性となる。

・症状が再現された場合
・検査による反応が遠位の関節操作によって増減する場合
・非検査側との異なる反応を示した場合


感度は高いが、特異度についてはバラツキがある。

そのため、陰性であれば頸椎神経根や末梢神経の感作がない可能性が高いが、陽性であっても確定は出来ない。


筋、神経、血管が原因となるケース


Wright test


胸郭出口症候群の検査。

橈骨動脈の拍動が減弱、消失する、症状が誘発されれば陽性。

感度は高く、特異度は不十分であることから、偽陽性が多いという報告がある。

本検査で陰性であれば、胸郭出口症候群を否定できる可能性は高くなるが、陽性であっても確定は出来ない。


Adson test 


胸郭出口症候群の検査。

橈骨動脈の拍動が減弱、消失する、症状が誘発されれば陽性。

感度、特異度ともに高めであることから、陽性の際は胸郭出口症候群の可能性は高い。

しかし、陰性であっても否定が出来ないため、Wright testと組み合わせることで症状の有無を肯定する可能性が高くなる。


Eden test

胸郭出口症候群の検査。

橈骨動脈の拍動が減弱、消失する、症状が誘発されれば陽性。

単独での報告はなく、costoclavicular test(コストクラビキュラテスト)と組み合わせた際の感度と特異が高いという報告がある。

そのため、この組み合わせで検査を行うと異常感覚や疼痛などの陽性所見となる症状が誘発される特異度が高いため、陽性の際亜h胸郭出口症候群の可能性が高い。


Roos test


胸郭出口症候群の検査。

実施中に症状が誘発される、3分間の運動継続が出来ない際は陽性。

感度が高く特異度が不十分なため、偽陽性が多いという報告がある。

本検査で陰性であれば胸郭出口症候群を否定できる可能性は高いが、陽性であっても確定は出来ない。

尚、検査時間を90秒に変更すると特異度が高くなる、Wright testと組み合わせると感度が最も高くなり、Adson testと組み合わせると感度、特異度と共に高くなる報告もある。




頭痛、頚部痛、不安定感などが原因となるケース


sharp-purser test


前述と同じ

cervical torsion test


前述と同じ


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