KeiS a medical professional

This is a blog about the scientific basis of medicine. A judo therapist reads research papers for study and writes about them.

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筋力と柔軟性で予防できない?ランナーの傷害について調べた結果

Monday, March 8, 2021

運動




今回は体の柔軟性と傷害予防について

皆さんは体が硬いとケガをするから柔軟が必要、と言われたことはありませんか?

健康に関連する業者らが口を揃えて言っているこの現象には、根拠があるのか?と思ったことはありませんか?

医療従事者ながらに疑問を持ち続け、謎の理論により納得するしかなかったのですが、それに対する研究が行われているものを見つけましたので紹介します。

研究の内容

怪我はランニングでよく見られ、レクリエーションランナーの最大94%に影響を与えるとみることができます。

医療従事者は、通常の筋骨格系の臨床評価からの特徴を利用して、傷害のリスクを評価することがよくありますが、これらの評価が将来の傷害に関連しているかどうかは不明となります。

この研究は、ランナーの下肢の損傷を予測する可能性のある筋力、柔軟性、可動域、およびアライメントの変化を特定することが目的となっています。

研究対象としたデータは、2018年5月までのPubMed、Embase、CINAHL、およびSPORTDiscusから得られたデータから選択されました。

将来のランニング関連の傷害に関連する筋骨格障害を分析した前向きコホート研究を参照にしています。

2人の著者が研究データを抽出し、Critical Appraisal Toolを使用して各研究の方法論的品質を評価し、GRADEアプローチを使用して全体的な品質を評価しました。


結果として、7つの記事が選択基準を満たし、識別された7つの臨床評価変更カテゴリーのエビデンスの質は非常に低いことがわかりました。

ある研究では、強い股関節外転筋がランニング関連の傷害と有意に関連していると記載され、股関節の外から内への回転強度の増加と股関節の内部可動域の減少は、それぞれ1つの研究でランニング傷害を予防するとされていました。

ある研究では、女性の舟状骨の低下の減少は、ランニング関連の傷害を予防する可能性があるとされています。


これらから、結論として証拠の質の低さも相まって、下肢の柔軟性や筋肉の強さなどが一貫して傷害を予防するとは言えないことがわかりました。


考察

それぞれの評価項目に対して、どのような見解があったのかを記載していきます。

殿部の筋力

股関節周囲の筋力と傷害予防に関するエビデンスは非常に質が低い。

1つの研究によれば、負傷したランナーと筋力が低い殿筋を持つ人との関連性がみられていましたが、他の研究ではこのような有意な結果はありません。

また、股関節外旋と内旋に関する筋力の強度の増加と傷害予防について関連すると報告する研究もありました。

股関節の可動域

股関節可動域に関するエビデンスは非常に質が低い。

2つの研究では、運動時の腰部の外内旋の可動性と、可動域の増加が脛骨の疲労骨折に対して予防する可能性がある示唆をしていました。


股関節の軸


股関節のアライメントに関するエビデンスは非常に低品質となっています。

2つの研究によると、 Q角と脚の長さについて調査しており、結果としてアライメントテストとRRIの間に有意な関係を見つけることができませんでした。

股関節の柔軟性


股関節の柔軟性に関するエビデンスも非常に質が低かった。

ある研究では、ストレートレッグレイズテストにて調査していましたが、ストレートレッグレイズテストとRRIの間に有意な関連性は見つかりませんでした。


膝周りの筋力

膝周囲の筋力に関するエビデンスも非常に質が低かった。

ある研究では、HHDを使用して膝の強度を調査しましたが、大腿四頭筋の強度またはハムストリングの強度とRRIとの間に有意な関連性は見つかりませんでした。


足関節の軸


足首のアライメントのエビデンスは非常に質が低かった。

3件の研究によると舟状骨の落ち込みと、傷害の関係を調査していました。

ある研究では、女性の舟状骨軸のズレと傷害との間に有意な保護関係があることを発見しました。
2つの研究では、舟状骨の落ち込みと負傷したランナーの間に有意な関係は見られませんでした。

ある研究は、足の軸について調査しましたが、足の軸と負傷したランナーとの間に有意な関係は見つかりませんでした。


足関節の可動域

足首の可動域に関するエビデンスは非常に質が低かった。

ある研究では、足首背屈の可動域を調査し、足首背屈可動域とRRIとの間に有意な関連性を報告していませんでした。



まとめ

下肢の状態とランニングによる傷害予防の関係性が低い、ということが示唆された研究結果となっています。

この結果を見た際に、データの不均一さがあるため言い切ることは出来ませんが、今まで自分が言われ、学んできたことに偏りがあったことを反省しました。

傷害が発生する際には、様々なことが予測されていますが、あくまでも傷害発生時の動作について言及しているものが多くあります。

そこから、自由な発想にて可動域や筋力に問題があると・・・というif論が多くあります。

あっても良いとは思いますが、無為に不安を煽り、心配している人に付け込んで商売したりすることをやっている現実もあることから、何故それが予防になるのか?という根拠性のある説明が欲しいものです。


今回の研究結果では、股関節の外転筋、股関節の内旋可動域の過剰な場合、足根骨の1つである舟状骨の落ち込みが傷害と関係しているのでは?と考察されていましたが、質の低さから言い切ることは出来ません。

参考にはなるかもしれませんので、是非にと。

Christopher SM, McCullough J, Snodgrass SJ, Cook C. Do alterations in muscle strength, flexibility, range of motion, and alignment predict lower extremity injury in runners: a systematic review. Arch Physiother. 2019;9:2. Published 2019 Feb 12. doi:10.1186/s40945-019-0054-7

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