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This is a blog about the scientific basis of medicine. A judo therapist reads research papers for study and writes about them.

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肩峰下インピンジメント症候群に対する整形外科医と理学療法士の考え方の違い

Monday, March 8, 2021

整形外科




今回は肩部痛とインピンジメントについて


皆さんは、肩部痛の中にインピンジメント症候群による痛みが起きるのは知っていますか?

肩部痛=肩こりと捉える人も多いかと思われますが、肩こりというのは俗称であるため、痛みの原因にはいろいろなものがあり、特定しなければなりません。

その中にインピンジメント症候群というものがあるのですが、インピンジメント症候群とは軟部組織が何らかの理由で他の軟部組織と衝突することから起こるものです。

臨床でもそう珍しいものではないため、対処する方法を身に着けて置かなければならないのですが、臨床医と理学療法士の対応でどちらが適しているのか?ということを調査した研究がありました。


研究の内容

肩甲骨下インピンジメント症候群(SIS)は、肩の痛み(SP)の患者の約74%で、障害の一般的な原因であることを示しています。


現代の研究で、SISがSPの原因でないことを説明されていますが、依然として学者や臨床医の間で議論となる話題の1つであるようです。


臨床的観点から、臨床医がSISを治療するための効果的な方法として、医学的アプローチと理学療法アプローチの両方を使用しています。


この調査は、イタリアの理学療法士と整形外科医のSIS患者の管理モデルを調査することを目的としています。


OMPTと整形外科医の知識を評価するために、29項目の質問票を使用したオンライン調査が実施されました。

・診断手順における画像診断の役割

・理学療法による管理

・SIS患者の薬理学的、外科的管理


629人の回答者から調査を完了することが出来ました。

・511人のOMPTと128人の整形外科医


OMPT(92 %)と 整形外科医(80.5%)は、SISの患者では、診断テストの組み合わせにより診断精度が向上することを述べています


OMPT(27%)と整形外科医(4.7%)は、リフトオフテストが最も具体的なテストであると述べました


OMPT(83%)と40人の整形外科医(31.3%)が、SIS患者の診断方法としてスタンダードと言えることは、病歴と臨床検査であると回答しました。


臨床医と理学療法士の違い

研究内でどのような違いがあったのかを紹介します。


臨床検査

臨床検査における特異性に関して、ほとんどのOMPTは、Empty can testの特異性が最も高く、Neerサインの特異性が最も低いと回答しました。

整形外科医は、​​ホーキンス-ケネディテストの特異性が最も高く、リフトオフテストの特異性が最も低いと回答しました。


SIS患者の診断に関して、OMPTの大多数は病歴と臨床検査の両方からの情報を記録することによって診断に到達する必要があると述べました。

だが、整形外科医は臨床検査と画像診断で診断できると回答しています。


治療方針

SIS患者の治療方針については、OMPT、整形外科医の両方ともで保存療法の適用が、最も有用であると答えています。


理学療法の捉え方

保存療法の中で、機能を回復する可能性が高い方法として認識されているものは、運動療法であったという回答でした。

しかし、運動療法の目的に関しては、OMPTの大多数は患者教育と安心させることが主な目的であると述べ、整形外科医の大多数は痛みの軽減を主な目標としていました。


運動療法において注目するべき点としては、OMPTは運動は特定の構造を対象にすべきではないと回答しました。

しかし、整形外科医は運動療法は肩甲骨のジスキネジアに焦点を当てるべきであると回答しました。


運動療法の実践については、OMPTはSISの患者に実施する運動療法は僅かな頻度であると回答し、整形外科医は無痛状態で行うべきと回答しました。


まとめ

肩峰下インピンジメント症候群の対処法として、理学療法士と整形外科医の考え方の違いについて以上になります。

すべての資格者がこうある、というわけではありませんが、大多数がそういった考えであったようです。

理学療法士の方は患者に寄り添う形で治療を進める傾向にあり、整形外科医は生体力学的な面で治療を進める傾向にあるようです。

似たようなことが日本でも言えるのかと思いましたので紹介しました。

どちらが望ましいのかは患者個人の考えによりますが、補完医療の方針として望まれているのは、この研究での理学療法士のやり方であるとも言われています。

しかし、多くの自称"治療家"はこの研究での整形外科医に寄っている考えをしている傾向にあると感じる場面が臨床で多くあります。


売り上げを作るためのセミナーなどでも、整形外科医のような考えを蔓延させるような内容であり、この研究結果で得られたものと反対の方向性になっています。


胸に手を当て、考え直す必要がありそうなものです。


Brindisino F, Ristori D, Lorusso M, et al. Subacromial impingement syndrome: a survey of Italian physiotherapists and orthopaedics on diagnostic strategies and management modalities. Arch Physiother. 2020;10:16. Published 2020 Sep 2. doi:10.1186/s40945-020-00087-7

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