今回は産後とランナーについて
女性の方は、出産後に筋肉痛や筋肉に違和感などの経験がありますか?
骨盤矯正や姿勢矯正など、産前産後にケアをする人もいるようですが、筋肉に関連した悩みを経験する人は少なくはないようです。
しかし、それらの悩みに対し何かしらの対処をするか?と言われると、子育てで忙しいため出来なかったという意見を耳にすることが多いです。
紹介する研究では、産後とランニングに注目し、筋骨格系で何の異常が起きているのかを調査したものとなりますが、医療従事者の方は参考に出来る内容だとは思います。
研究の内容
産後のランナーは、ランニングに伴った筋骨格痛があると報告されています。
十分な研究がないため、起源と痛みに関連する分類についてはほとんど知られていません。
専門家のコンセンサスを通じて、この研究はこれらのランナーが提示する筋骨格系障害を理解するための最初の試みと言えるものであるそうです。
この調査の目的は、筋骨格痛のある産後のランナーで報告された障害の特徴に関する専門家のコンセンサスを収集することでした。
WebベースのDelphi調査が実施され、5つのカテゴリで構成されていました。
強度、可動域、位置合わせ、柔軟性の障害、および産後のランナーの痛みの危険因子を調査していました。
合計117名の専門家が招集され、45人の専門家がラウンドIを完了し、41人がラウンドIIとIIIを完了しました。
コンセンサスに達した強度障害は、腹部、股関節、骨盤底筋の衰弱でした。
コンセンサスに達した可動域障害は、股関節伸展制限、前骨盤傾斜、および一般的な過可動性でした。
コンセンサスに達したアライメント障害は、トレンデレンブルグ徴候、動的膝外反、腰椎前彎、過剰回内および胸椎後弯症でした。
コンセンサスに達した柔軟性障害は、腹壁の弛緩、および股関節屈筋、腰椎伸筋、腸脛靭帯および膝腱の緊張でした。
産後のランナーの痛みの危険因子と言えるのは、筋肉のアンバランス、腰と骨盤のコントロール不良、早期復帰、ストレス、妊娠中の痛み、骨盤底の外傷でした。
考察
この研究で分析された結果は、質が高いと言えることではないため、臨床においては何が重要なのかを判断する必要性があるということでした。
研究者らによれば、腰と骨盤周囲の活性化が必要となるケースと、股関節の柔軟性を向上する必要があるケースと分かれてくるのではないか?と考えられていました。
アライメントに関しては、上述にあったトレンデレンブルグ徴候、動的膝外反、腰椎前彎、過剰回内および胸椎後弯症という結果で相違はないとのことです。
生体力学などでは以上の要点を確認する必要はありますが、産後のランナーが負傷する理由として挙げられる危険因子としては、
・筋肉のアンバランス
・腰と骨盤のコントロール不良
・ストレス
・早期復帰
・妊娠中の痛み
・骨盤底の外傷
とあり、研究の文中によればストレス、早期復帰、骨盤底の外傷が危険因子として優先されることであるため、医療従事者らはこれらの要因を無視することは出来ません。
とありましたが、これらのデータのエビデンスの質は高いものではないので、臨床現場では確認することが盛りだくさんです。
まとめ
産後に競技復帰する際の筋骨格系障害のリスクは以上のようになっています。
何度も書きますが、得られたデータのエビデンスは低いので、臨床では異なる結果が出て当然なのですが、これらのことを把握しているのとしていないのとでは、カウンセリングの際に得られる情報に差が出てきます。
産後の女性に注目した文献は少ないため、参考に出来る内容と思い紹介しました。
Christopher SM, Garcia AN, Snodgrass SJ, Cook C. Common musculoskeletal impairments in postpartum runners: an international Delphi study. Arch Physiother. 2020;10:19. Published 2020 Oct 26. doi:10.1186/s40945-020-00090-y