今回は間違った情報と傷害について
皆さんは筋肉にに関する怪我をした時に、何を頼りに情報を手にしますか?
知人、専門家、病院、ネットなどなど、情報を得る手段は幾つもあり、何を信用するのかは人によってそれぞれかと思われます。
数十年前に比べると、インターネットの普及が一般化した影響もあり、ネットに記述されている情報の正確さは向上したようにも思えますが、書籍や専門家に比べると頼りない、と感じる人も少なくはないと思います。
1つに書籍などで、専門性の高い情報を載せる時は、監修している人が必ずといっていいほどいて、研究論文などは査読といった形で情報の精度を確認しています。
インターネットや一般な健康情報には、こういった情報の確認が不十分なこともあり、正確性に欠ける情報が横行している状態なのかと考えられます。
余談ですが、当ブログにおける健康情報はすべて研究結果から基づいていたりしますので、情報の精度に関しては問題なくしています。
研究の内容
筋骨格の健康に関する一般の人の理解度は、著名な運動選手が負傷した時などのメディアの報道に影響されている可能性があります。
研究者らは、プロや大学のアスリートの病気に関するスポーツメディア報道において、議論の余地のある、または誤解を招く可能性のある要因を評価していました。
2018年2月19日~3月26日までの著名な運動選手の筋骨格系疾患に関するインターネットメディアレポートの中から200件特定し、評価したものになります。
メカニズム、診断、治療、および予後に関する医学的根拠があるのかを記録しました。
次に、これらのステートメントを正確、議論の余地がある、または誤解を招く可能性があるものとして分類しました。
多変数ロジスティック回帰モデルを作成して、議論の余地のある、または誤解を招く可能性のあるステートメントに独立して関連する要因を特定しました。
結果として、発表されている情報の45%は議論の余地があるか、誤解を招く可能性がありました。
・診断:オッズ比= 0.17
・治療:OR = 0.33
・予後:OR = 0.27
とあり、肩と肘の障害に関する記述は、受傷機転に関する記述、および膝の障害に関する記述と比較して不正確であることがわかりました。
考察
結果として、スポーツ外傷に関連する筋骨格系の疾患については、肩や肘の方が間違った内容を書いてあることが多いといったものでした。
研究者らの考察によれば、肩や肘の問題よりも、膝や足首の障害は外傷に起因していることが多く、また罹患率も高いことから、情報の集積がしやすいことにあるため、このような結果なのでは?といったことを述べていました。
肩や肘は直接的な外傷、というよりは機能障害から負傷するケースがあるため、これらの説明に不正確な情報が上がっているといったことが考えられます。
私の意見として、それぞれの部位に対する負傷やリハビリ、治癒の基準など不明確なものを平然と言っている人は多くなっている傾向なのかも・・・と感じることがあります。
そう感じるのは、私の職務柄で外傷を診ることが殆どなのですが、柔道整復師という業界は衰退しているため、従来の業務より別の食える業務に移行しているような風潮が強くあります。
他から取り入れる知識や技術は前向きなことかとは思いますが、医師が診断し治療する、といったシステム上、医師らが困惑することを患者に伝える人が後を絶ちません。
患者は、自分が信じる治療方法などに対し、医師などの提案がズレていると治療計画が上手くいかなくなり、出来たはずの治癒計画が破綻することを懸念しています。
一方では、医師の診断ミスや対応に不満があるなどで、医療関連以外の健康商品を取り扱う業者らに相談し、自分の治療方針に納得している人もいます。
どっちもどっちなのですが、情報を広めるのであれば出典などを確認し、正確性の高い情報を発信する必要はあると思っています。
特に影響力の高いメディアに属する人には、きちんと調べてから報道して欲しいものです。
まとめ
研究結果から、ネットに記載されている筋骨格系に由来する疾患の誤情報は半数ぐらいであったとされていました。
情報がいつでも得られる分、情報過多になっている人もいるようですので、何を基準に情報を選定するのかはあなた次第です。
心理学的にも、人は判断を下す時に脳を節約する癖があり、自分の好みに偏った情報を取り入れる、といったことが示唆されるものもありました。
もう少し頭を使っていった方が良いのかと思われます。
Haidar LA, Kortlever JTP, Ring D. Misinformation in News Coverage of Professional and College Athlete Musculoskeletal Ailments. Arch Bone Jt Surg. 2020;8(1):33-37. doi:10.22038/abjs.2019.34844.1916