KeiS a medical professional

This is a blog about the scientific basis of medicine. A judo therapist reads research papers for study and writes about them.

sponsorlink

関節が緩い人はバランスが崩れやすい?という研究について

Sunday, March 7, 2021

運動

 

今回は関節弛緩と姿勢制御について

皆さんは関節が緩いと言われたことはありますか?

関節が緩いというのは、一般的に稼働する範囲を超えた状態のことを言い、女性や家族歴、若い年齢、スポーツ競技の特性に関係があると言われています。

臨床でどう使うのは皆さんの想像に依存しますが、興味深い内容の研究を見つけたため紹介します。

研究の内容

研究は、テトラアタキシメトリック姿勢記録法(Tetrax®)を使用して、関節弛緩と姿勢バランスの間の潜在的な関係を調べることを目的としたものです。

計69人の参加者が対象となり、Beighton-Horan過可動性指数スコアで決定された過可動性重症度に基づいて3つのグループに分類されました。

それらのうち、29人の参加者は非過可動性であり、13人の参加者は軽度の過可動性であり、残りの27人の患者は重度の過可動性であることがわかりました。

参加者の姿勢制御は、8つの異なる位置でTetrax®デバイスを使用して評価されました。

各参加者の安定性指数、フーリエ指数、体重分布指数、および同期指数スコアが記録されました。

結果として、重度の過可動性の参加者は、頭の位置を伸ばして右に回転させている間、有意に高い安定性指数スコアを示したことがわかりました。

弾性表面の体重分布指数は、非過可動性および重度の過可動性の参加者で損なわれました。

フーリエインデックススコアは、重度の過可動性の参加者において、より高い中周波数(0.5〜1 Hz)でより高いことが観察されました。

同期インデックススコアに関しては、グループ間に差はありませんでした。


結論として、重度の過可動性と判断された人は、非過可動性の人と比較した場合、頭を伸ばした位置で、頭を回転させた状態での姿勢安定性が低下していることを示唆しています。

この不安定性の増加は、特に頭の伸展と回転運動を必要とするスポーツにおいて、筋骨格損傷のリスクの増加につながる可能性があります。


関節弛緩性

関節の弛緩性があるのかどうかは、以下のことから調べることが出来ます。

1.指の過伸展テスト

前腕回内位にて、検者は痛みが生じるまで対象者の5指を伸展させます。
90°を超える可動域の場合はスコアが加算されます。

2.肘過伸展テスト

肘関節の伸展量をゴニオメーターにて測定し、10°を超えた過伸展はスコアが加算されます。

3.サンプ反対テスト

手首を曲げ、指が前腕に着くように伸ばします。
前腕屈筋面へ指がくっ付く場合は、スコアが加算されます。

4.膝の過伸展テスト

立位にて、両膝を伸ばした状態で前屈します。
膝の伸展量をゴニオメーターを使用して測定します。
10°を超える過伸展の場合は、スコアが加算されます。

5.前屈テスト

前屈みになり、両膝を伸ばした状態で床に触れます。
手のひらと手が床につく場合は、スコアが加算されます。



スコアは0~9で結果を出し、0~2の場合は関節弛緩性がない、3~4は中程度、5~9は明らかな関節弛緩性を認める、といった見方をします。

これは、Beighton-Horan関節可動性指数といった方法で、ゴニオメーターだけを使う簡単な検査法となります。

自己診断は出来ないものなので、知りたい時は専門機関に行くしかありません。


何故、バランスが崩れるのか?考察


頭部を右に回転させ、後屈した位置にあると立位バランスが崩れることが分かった研究結果となっていましたが、目を開いて頭部を後屈しても同様なことが見られる場合もあるようです。

このことから、前庭部のストレスと、頸部の筋肉にストレスがかかり、バランスが崩れるのではないか?ということが考えられます。

前庭頸部障害を持つ、自律神経機能障害由来の起立性低血圧も関係する場合があるため、前庭部と頚部の筋力に由来しないケースもあることは知っているべきです。


話を戻すと、頸部には高密度の筋紡錘があり、頸部求心性神経は姿勢の安定性を維持するために強直性頸部反射に関与しています。

また、膝受容体に由来する固有受容性信号が弱いと、バランスが損なわれることが知られています。

このことから、関節弛緩性の人が固有受容器の問題も考慮した場合、バランスが崩れることは驚くべき問題ではないということがわかります。


これらの由来に属さない関節弛緩性を持つ人でも、姿勢制御に問題があることを考えると、スポーツ競技者に携わる医療従事者らは、このことを把握していることが傷害予防に役に立つことも知るべきであります。

前庭部に障害がある場合は、専門科への相談が必要になってくるかとは思われますが、筋肉由来の場合でも関係者はこの人たちに対策を講じる必要があります。

具体的な方法は研究では示されてはいませんが、推奨する方法としては、立位バランスに由来する筋肉群の活性化をプログラムとして提供しては?といった内容がありました。


まとめ

関節弛緩性がある人は、何らかの理由で姿勢制御が苦手となり、特定の肢位を取るとバランスが崩れる、といったことが示唆されった研究の結果となりました。

当てはまるであろう条件から、審美系スポーツや球技をやっているスポーツ選手は、バランスが悪い際はこういった原因がある可能性は考えなければなりません。


筆者は、上述のテストにてスコアが5以上となっていますので、立位バランスを取ることが苦手なのですが納得した内容の研究でした。

何らかの対策を始めたいと思います。

Aydın E, Metin Tellioğlu A, Kurt Ömürlü İ, Polat G, Turan Y. Postural balance control in women with generalized joint laxity. Turk J Phys Med Rehabil. 2017;63(3):259-265. Published 2017 Jan 2. doi:10.5606/tftrd.2017.160

QooQ