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高強度インターバルトレーニングは脂質代謝を促さない?って研究

Monday, March 15, 2021

運動

 

今回はHIITトレーニングと脂質代謝について

皆さんはHIITトレーニングはご存じでしょうか?

トレーニングブームから、様々なトレーニング方法の議論がなされていますが、中にはトレーニング方法の神話を信じてやまない人もいます。

○○トレーニングは筋肉に効かない、○○トレーニングは劇的に痩せる、○○トレーニングは筋骨格系障害を改善するといったように。

トレーニング方法にそのような過剰な文言を使う人には注意していたいものですが、トレーニング方法によって生理学的な変容を目的としたものもあるのは事実です。

そんなトレーニング方法にHIIT(高強度インターバル)トレーニングというものがあり、短時間で高負荷を掛けることが出来るので、人気のあるトレーニング方法かと思われます。

私もこのトレーニング方法を実践していますが、心肺機能の強化、という点で耳にしたため実践していましたが、中には脂質の分解を促進する~というような聞いたことのない効果を謳う人もいました。

紹介する研究でも、高/中強度インターバルトレーニングが、脂質代謝に寄与するのかどうかを調査していましたので紹介します。


研究の内容

この研究の目的は、成人の脂質プロファイルに対する中強度連続トレーニング(MICT)と高強度インターバルトレーニング(HIIT)の効果を比較する。

総コレステロール(TC)
トリグリセリド(TRG)
高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)
低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)

の運動誘発性変化を決定する可能性のあるトレーニングまたは参加者の特性を特定するために行われました。

実験は、系統的レビューとメタ分析で設計されているため、証拠の質は低くはありません。


評価基準として、以下のことから評価されます。

1)グループ集団n≥5のランダム化比較試験を発表
2)介入期間が4週間以上
3)HIITとMICTの比較
4)介入前後の脂質測定値を報告する

除外要素として、エリートアスレチックトレーニング中の、18歳未満、妊娠中/授乳中の慢性疾患のある被験者と食事療法または医薬品介入の要素を用いた研究。


結果として、823人の参加者の29のデータセットがプールされ、分析されました。

HIITもMICTも、
・TC(0.10(-0.06〜0.19)、p = 0.12、I 2 = 0%)
・TRG(-0.05(-0.11〜0.01)、p = 0.10、I 2 = 0%)

減少に優れていませんでした。

・LDL-C(0.05(-0.06〜0.17)、p = 0.37、I 2 = 0%)
・TC / HDL-C(-0.03(-0.36〜0.29)、p = 0.85、I 2 = 0%)

HIITは、MICTと比較してHDL-Cを有意に上昇させました。


結論として、HIITもMICTも、TC、TRG、LDL-C、またはTC-HDL-Cの比率を変更するのに優れていません。

MICTと比較して、HIITはHDL-Cを大幅に改善するように見えました。

これらのトレーニングは、運動への参加を促し、心血管リスクを軽減し、HDL-Cを上げるために、HIITはMICTと比較してより大きな効果量をもたらす可能性があります。


解説

まず、HIITとMICTの違いですが、心肺機能に掛ける負荷が異なっています。

・MICT:最大心拍数の55〜70%、ボルグスケールで11〜13の知覚努力率
・HIIT:最大心拍数の70~90%、ボルグスケールで14–16の知覚努力率

もし、血中の脂質に対して期待をするのであれば、HDL-C値が増加する可能性があるという点にのみと考えていた方が良いようです。

この研究が参照にした研究結果の中には、

・MICTを4~6週行った結果、脂質燃焼にはHIITよりもMICTの方が優れているというデータもあったが、介入期間が不足しているため追加研究が必要とありました。

・トリグリセリド値に関しては、HIITの方が減少が有意だったというデータもある。

・LDL-Cに関しては、HIIT、MICTでも減少したというデータもあれば、HIITで有意に減少したというデータもあるし、体重減少に伴うLDL-Cの減少は確認できていないというものもあります。


まとめ

HIITトレーニングが血中の脂質に齎す影響として、HDL-C値に変化が起きるかも?ということでした。

研究のコメントによれば、血中の脂質に影響があるのは、運動強度よりも身体活動量である可能性が高いとのことでしたので、脂質を代謝したい人はHIITに別のトレーニングを組み合わせる必要はあるようです。

よって、医療従事者らで患者の脂質を管理する立場にある人は、HIITトレーニングだけを薦めるのではなく、週に1,200kcal(最小閾値)を有酸素運動で消費するように促す必要があるようです。


しかし、HIIT,MICTの両方が筋肉などの微小毛細血管に影響があるとのことですので、これらのトレーニングを否定するわけではないことだけご存じください。


Wood G, Murrell A, van der Touw T, Smart N. HIIT is not superior to MICT in altering blood lipids: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open Sport Exerc Med. 2019;5(1):e000647. Published 2019 Dec 17. doi:10.1136/bmjsem-2019-000647

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