今回はアキレス腱障害と腓腹筋の硬さについて
皆さんはアキレス腱に何らかの障害が起きた場合、腓腹筋は硬くなると思いますか?
筋肉において、筋力というのは有用なバイオマーカーとなるため臨床でも筋力を調査することに意義はあります。
アキレス腱は腓腹筋とヒラメ筋から成るものでもあるため、これらの筋肉の状況とアキレス腱障害の関連性は無視することが出来ません。
その関係性を調査した研究を紹介します。
研究の内容
この研究の目的は、アキレス腱障害と診断された患者の腓腹筋の硬さの定量値を確立することになります。
片側性アキレス腱障害および無症候性グループと診断された患者の単一(横断的)時点でのケースコントロール研究となります。
50人の参加者のサンプルを対象とし、症候性の片側性アキレス腱障害(症候性グループ)の25人の参加者で、このグループの無症候性側を対照として使用しました(対照グループ1)。無症候性のアキレス腱を持つ25人の参加者の3番目のグループ(対照グループ2)。MyotonPROを使用して、
・自然振動周波数(F)
・動的剛性(S)
・機械的応力緩和時間(R)
・対数減衰率(D)
・クリープ(C)
などの機械的剛性パラメーターを評価しました。
内側および外側の腓腹筋での測定は、非体重負荷(NWB)および体重負荷(WB)として行われました。
結果として、
・自然振動周波数(F)
・動的剛性(S)
・クリープ(C)
についてWBおよびNWB条件で、平均症状群と対照群1、2の間に有意な差が観察されました。
症候性グループNWBのSWBが大幅に減少し、逆にSが大幅に増加しました。
クリープ(C)と機械的応力緩和時間(R)は、症候性グループNWBで有意に少なかった。
対数減衰率(D)について、NWBデータセットとWBデータセットの間に有意差が観察されました。
NWB Dは、WB条件よりも有意に高いスコアを示していました。
結論として、障害のアキレス腱を持つ人の腓腹筋は柔らかく、筋収縮しても柔らかいということだそうです。
考察
別の研究にて、
・姿勢の揺れと筋緊張の実験では弾性に変化なし
・不安定な状態と安定している状態で腓腹筋の剛性に差は無い
とあります。
さらに、腓腹筋とアキレス腱を対象としたプライオメトリックトレーニングと等尺性トレーニングを比較する実験では、
・プライオメトリックでは、筋肉のこわばりが増加
・等尺性トレでは、筋肉のこわばりに変化なし
とあるため、アキレス腱のみのリハビリとして等尺性トレを採用している場合は、腓腹筋を対象と見なしていない可能性があります。
上述の研究にもあったことと、膝蓋腱障害の例も加味すると皮質脊髄路に興奮性の反応が起きている可能性があります。
こうした皮質脊髄路の変化は、筋肉の保護、負担軽減活動に関わっていることが示唆されていました。
まとめ
臨床ではここまで細かく見ている人はいるのか?と疑問にも思いましたが、各種検査器具などにより詳細をデータ化したい人には、確認してみて欲しい内容となりました。
そうでなく、単に臨床に活かすとなれば、腱障害が起きている腓腹筋にどういったアプローチが適切なのかは分かっていただけたかと。
マッサージでは解決できないこともありますよね。
Morgan G, Martin R, Welch H, Williams L, Morris K. Objective assessment of stiffness in the gastrocnemius muscle in patients with symptomatic Achilles tendons. BMJ Open Sport Exerc Med. 2019;5(1):e000622. Published 2019 Oct 18. doi:10.1136/bmjsem-2019-000622