今回は肋骨骨折の予後について
皆さんは肋骨を骨折したことがありますか?
転倒や事故、または暴行などで起こると言われている肋骨骨折が、多くの症例では非外科的に治療され予後も良好とされています。
そんな肋骨骨折を管理する中で、どのぐらいの期間が経てば呼吸器の機能が元に戻るのか?ということを調査している研究を紹介します。
研究の内容
肋骨骨折は、経口薬を含む保守的な管理でほぼ回復し、痛みは薬で簡単にコントロールできますが、生理機能は簡単には評価できません。
この研究では、呼吸機能検査(PFT)の回復に影響を与える要因と、肋骨骨折後の時間による変化を調査することを目的としています。
2015年8月から2018年1月まで、肋骨骨折患者の医療記録が遡及的にレビューされました。
PFTの回復に影響を与える可能性のある要因(年齢、慢性閉塞性肺疾患、骨折の数、肋間神経ブロック)を評価し、
パラメーターPFT
・強制肺活量[FVC]
・強制1秒で呼気量[FEV 1]
・2ヶ月間の総肺活量[TLC]
・肺活量[VC]
が観察されました。
総患者数は60人で、PFTは1か月後と2か月後にそれぞれ38人と27人の患者で完了しました。
平均年齢は55.1歳(20〜84歳)で、平均骨折数は3.98(1〜11)でした。
肋間神経ブロックと肋骨固定はそれぞれ32例と2例で行われていました。
年齢、骨折の数、肋間神経ブロックは、PFTの変化にとって重要な要因ではありませんでした。
しかし、慢性閉塞性肺疾患は、FEVの回復に重要な因子であったようです。
1カ月でPFTはFVC、FEVと改善され、2か月でTLC、VCで改善しました。
この研究は、肋骨骨折後の生理学的回復の証拠と予後を示しました。
解説
そこまで詳しく解説しなくとも上述の内容でも十分に把握は可能ですが、一般的な肋骨骨折の管理として、2カ月後には呼吸機能は回復していることが示唆される結果となっていました。
1か月でも肺活量以外の部分では変化が出ているようなので、日常生活上での支障は解決し始めている時期なのかもしれません。
回復に影響する因子として、慢性閉塞性肺疾患が挙げられました。
また、肋骨骨折により悪影響がもたらされるとすれば、肺の基礎疾患と高齢であることも含まれるため、これらに該当する人を管理する際にはより注意が必要となるようです。
まとめ
このような治癒期間に関する研究は、臨床でも役に立つことがあるため、回復の程度を測るために呼吸器系の計測などを実施しても良いのかもしれません。
私の周りだけ?なのかもしれませんが、基本的に身体機能面よりも画像検査上で問題なければ完治といった判断をしている医療機関もあるので、こういったことを知るのは大切なことと思われます。
Hwang EG, Lee Y. When will pulmonary function recover after rib fracture?. J Exerc Rehabil. 2020;16(1):108-111. Published 2020 Feb 26. doi:10.12965/jer.2040044.022