今回は筋骨格系の痛みを理解する、について
やってはいけない行動反応
痛みに対する考えと、関連する障害との関係を説明するときに、「恐怖回避モデル」という考え方があります。
この方法が推奨できない理由として、痛みによる恐怖を回避することにより、行動が疎遠になる可能性があります。
このモデルは、筋骨格系の痛みが健康と幸福に脅威を齎すことを認識し、信じた時に、恐怖反応が誘発され、恐怖回避の「行動」をもたらす可能性があります。
例えば、腰痛のある人が痛みを回避するために、多くの筋肉活動を制限し、運動制限や筋性防御などの「保護」反応として現れる可能性があります。
それは、日常生活動作に影響を与え、痛みに関連する活動から回避し、活動を恐れて回避することで、周囲への思わぬ依存を齎す可能性があります。
しかし、恐怖回避行動は、健康上の脅威に対する常識的な問題解決の反応と見なすことができ、身体部分から痛みを避けて保護することが論理的といえます。
論理的ではありますが、これらの行動反応は痛みと障害を永続させるという証拠があり、他を支えて保護すること自体が、組織負荷を増加させることがあります。
それにより、侵害受容性を高め、痛みの経験を高め、悪質な恐怖回避サイクルを促進する可能性があります。
よって、臨床上「恐怖回避モデル」を利用した指導や治療方針などは望ましくないとされています。
一般的には、腰が痛いから痛みが起きないように行動を制限する、といった指導をしている様子を思い浮べて下さい。
やってはいけない感情的反応
否定的な感情的反応を引き出してしまうのは、痛みを管理するための効果のない対処戦略への反応を表しており、価値ある活動への関与を失い、仕事や社会生活、そして身体の健康を脅かします。
就業活動を回避した場合、仕事の安全と将来の経済的な面に影響があり、感情的な苦痛を引き起こし、それがさらに痛みの経験を高めるのに役立ちます。
それらにより、価値のある生活活動に従事できないことに対する欲求不満、怒り、罪悪感などの他の否定的な感情は、痛みに関連する苦痛を悪化させる「自己感覚」の変化につながる可能性があります。
医療従事者が、その人の痛みを理解できない際も、否定的な感情的反応を引き起こす可能性があります。
医学において、疼痛がある場合は起因する疾患を考えなればなりませんが、特定が出来ない病状となった際に問題が起きます。
病状が説明できないいうことは、症状が心因性のものにより引き起こされていることを考えなければなりません。
非特異的な筋骨格痛と診断された患者は、自分が感じている痛みの正当性が疑問視されていると感じてしまいます。
これは、医療従事者が患者の症状を説明できないことを患者の所為にし、痛みは「患者の頭の中にある」と認識してしまっている、という研究結果もあり、それらの証拠によりより強固なものになってしまっています。
患者は起きている症状を正当化するため、診断-治療-治療経路に入る生物医学的説明を求め、より多くのケアを求める可能性があります。
また、矛盾する情報を受け取りやすい状況でもあるため、診断の不確実性が高まり、望まない疼痛を経験することもあります。
これらの感情的反応は、前項にもあった恐怖を回避することでより強固となります。
やってはいけない医療従事者の常識
臨床医が筋骨格痛について誤った、役に立たない信念を持っているという研究結果があります。
臨床現場では、時間的制約の基に治療を提供しているため、臨床プロファイルと治療アドバイスのバイアスへの依存により、臨床医のアドバイスは意図しない影響を与える可能性があります。
したがって、医療従事者らは以下のことを自らに問いかけてみてください。
・私は体と筋骨格痛についてどのような信念を持っていますか?
・その信念の根拠は何ですか?
・自身に筋骨格痛の経験はありますか?
・筋骨格痛に対応した私の反応はどうでしたか?
・筋骨格痛に対応した私の感情的な反応はどうでしたか?
・私は自分自身の臨床的偏見に気づいていますか?
・患者の精神的苦痛や矛盾する信念にどのように対応しますか?
専門科の人間であっても、自らの常識により患者に思わぬ負の感情を抱かせていることがあります。
まとめ
Caneiro JP, Bunzli S, O'Sullivan P. Beliefs about the body and pain: the critical role in musculoskeletal pain management. Braz J Phys Ther. 2021;25(1):17-29. doi:10.1016/j.bjpt.2020.06.003