今回は薄筋の損傷による膝のスナップ現象について
症例を学ぶ、ということは、臨床現場で自分が遭遇するかもしれない疾患を学ぶ上で必須だと思っています。
どういったケースで、どういった治療方法で、どのような転帰を、ということを知ることは疾患の基礎的知識を学んだ延長において重要なことです。
今回は、膝のスナップ現象の症例報告を紹介しますが、この症例は薄筋の腱が原因となっているものです。
症例
・30歳の女性
2年間、痛みを主訴とし、過去に怪我をすることなく左膝の内側にスナップ現象が起きた。
別のクリニックにて、半月板損傷の疑いがあると関節鏡検査にて診断を受けていたが、検査で半月板損傷を確認することは出来なかった。
身体検査の結果、能動的および受動的な屈曲/伸展中に、大腿骨内側顆の後内側角で、約30°の屈曲でスナップが観察された。
スナップは触知可能であり、腱の反転運動が屈曲時に後方に移動し、内側大腿顆上で伸展時に前方に移動するように見えた。
半月板、靭帯の損傷を示す所見は見られなかった。
画像検査にて、前後の体重負荷X線写真は正常な冠状アライメントを示し、四肢のCTでは、腱断裂を特定する屈筋腱と骨の異常な所見や変化を示さなかった。
膝のルート矢状、冠状面MRIは、顕著な変化が見られなかった。
物理、画像検査の結果に基づいて、内側ハムストリングス腱のスナップが症状の原因とされました。
手術時の薄筋腱の肉眼的観察では、腱の損傷、菲薄化、肥大、または瘢痕形成などの異常な所見は確認されなかった。
スナップ現象による、持続性の不快感と障害を考慮して、手術療法が適応されました。
全身麻酔下で行われた手術中、スナップ現象を再現することはできませんでした。
しかし、薄筋腱は、膝の屈曲/伸展中に内側大腿顆の後縁を越えて移動することが観察されました。
局所的な隆起や隆起などの骨の異常は確認されませんでした。
これらの術中所見から、大腿顆後内側角の薄筋腱の反転が症状の原因であると考えられました。
薄筋腱を内側大腿上顆のレベルで切断し、近位切断端を近位に引っ込めた位置で隣接する半腱様筋腱に縫合しました。
手術後、スナップ現象は解消されましたが、術前の状態と比較して明確な差が出る結果ではありません。
そして、スナップ現象は手術後、5ヶ月で再発してしまいました。
この症例から学べる事
・薄筋の走行経路に個人差があり、今回の症例では生理学上考えられない位置に薄筋腱が走行していたということ。
・頻繁に行われる動作の中で、腱が亜脱臼を起こし腱炎を引き起こすことがある。
・異常走行の腱に対しては、今回の件の場合は手術療法で対象の腱を別の組織と縫合するという方法がある。
まとめ
私が臨床で診たとしたらどうだろう?という気持ちで読んだ症例報告になりましたが、おそらくわからないまま専門機関への画像診断をするように促していたと思います。
スナップ現象は、他の関節でも起こり得るし、関節内腫瘍や滑膜プリカ、靭帯の摩擦、腱の亜脱臼などで起きるものです。
組織の損傷ばかりに気を取られていると、亜脱臼のような走行経路の違いに気づけないこともある、ということを学べた症例となりました。
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