今回は回旋筋腱板損傷の発生要因について
回旋筋腱板は肩の支持組織となりますが、その部位を損傷することは一般的なものになります。
肩部が痛い時は回旋筋腱板損傷を疑わなければならないほど一般的なものです。
そして、この部位を損傷する要因として、肩の姿勢などが問題視され、補完医療などを提供する施設などでは、原因の1つとして説明されることもあります。
そんな肩の姿勢不良が、実際に回旋筋腱板損傷と関係するのか調べてくれている研究がありましたので、紹介します。
研究の内容
RCTと確定診断された合計61人の患者がこの後ろ向き研究に含まれました。
肩の前後のX線写真を使用して、内転および中立回転位置での肩の勾配を測定しました。
痛みのレベルは、痛みの視覚的アナログ尺度で評価されたものとなります。
患者の平均年齢は55.7±12.3歳です。
患者が示すVASは4.1±1.2でした。
平均肩勾配は、影響を受けた肩で14.11º±2.65º、
影響を受けていない肩で15.8º±2.2ºでした。
この差は統計的に有意ではありません。
負傷した肩と負傷していない肩の間に1.15º±1.82ºの差が見られました。
肩の勾配の違いと患者の人口統計学的および臨床的特徴との間に有意な関連は見られなかった。
著者の結論
肩の勾配はRCTの病理とは関連していません。それでも、RCTの病因における肩の勾配の役割をさらに調査するには、より標準化され、より大きなサンプルサイズでの将来の研究が必要です。
まとめ
結果から、病理的に分析されたものとして肩の勾配、なで肩や猫背の時に見られる肩の肢位は、回旋筋腱板損傷と関連するのかは怪しいものとなりました。
臨床では、回旋筋腱板損傷と判断された、既往のある人では肩の位置に左右差があったりするため、関連するようにも思えましたが、それが病理学上そうといえるわけではないということ。
つまりは、肩の位置どうこうを原因と考えるよりは、他の状況を考察した方が良さそうです。
しかし、今回のような肩の勾配に関しては、差が出ている方がインピンジメント症候群を発症している研究結果も別にあったりします。
このことから、回旋筋腱板損傷を検討する際は、上腕骨などの位置よりは、肩峰の間隙や鎖骨の位置などを計測した方が良いのかもしれないということでした。
見た目で決めつけて診断してはいけないってことです。
Sobhani Eraghi A, Hajializade M, Shekarchizadeh E, Abdollahi Kordkandi S. Role of shoulder gradient in the pathogenesis of rotator cuff tears. World J Orthop. 2020;11(4):206-212. Published 2020 Apr 18. doi:10.5312/wjo.v11.i4.206