今回は腰椎椎間板ヘルニアと理学検査について
腰痛の原因のうちの1つである腰椎椎間板ヘルニアですが、神経根に圧力をかけられ、下肢痛や坐骨神経痛という中々に痛みを伴う症状のことです。
臨床でまぁまぁ遭遇した本症ですが、この疾病を疑わずに腰痛を補完医療などで対処していても、一時的な緩和が期待出来ても原因が取り除けるわけではないのでまぁ痛みます。
外科的治療法が転帰が良好な場合もあるため、なるべく早くに本症が判明するに越したことはありません。
そんな本症を特定するための理学検査が数種ありますが、それらの有用性についてレビューされていたものを紹介します。
研究の内容
16つのコホート研究と3つのケースコントロール研究がまれたレビューとなります。
このうち、プライマリケア集団で実施された研究は1つだけとなります。
ほとんどの身体検査(脊柱側弯症、不全麻痺または筋力低下、筋肉の消耗、反射障害、感覚障害)の診断パフォーマンスは不十分となる結果が得られました。
内、幾つかのテスト(前方屈曲、過伸展テスト、およびスランプテスト)はわずかに良好に機能しましたが、検証した研究の数は少なかったです。
とあるプライマリケア研究では、ほとんどの検査で他の設定と比較して高い特異性と低い感度が示されました。
ほとんどの研究では、ストレートレッグレイズ(SLR)テストを評価していました。
椎間板ヘルニアの有病率が高い(58~98%)ことを特徴とする外科集団では、SLRテストは高い感度を示し、特異性は大きく異なります。
イメージングを使用した研究の結果は、より多くの不均一性とより低い感度を示しました。
交差したSLRは、高い特異性を示し、一貫して低い感度を示しました。
陽性の検査結果を組み合わせると、物理検査の特異性が高まりましたが、検査の組み合わせに関するデータを示した研究はほとんどありませんでした。
レビューアの結論
単独で使用した場合、現在の証拠は、腰椎椎間板ヘルニアを特定するために使用されるほとんどの物理的検査の診断性能が低いことを示しています。ただし、ほとんどの所見は外科的集団から生じており、プライマリケアまたは選択されていない集団には当てはまらない可能性があります。テストを組み合わせると、パフォーマンスが向上する場合があります。
まとめ
このレビューにはSLRテストを始めとした理学検査法が確かめられていましたが、結果としてはこれらの検査を実施したとしても診断性能は高くないことが示唆されています。
神経原性を疑う検査法として他のものでは、感度の方はある程度高く、特異度が不十分だったりする報告も見られますので、腰椎椎間板ヘルニア自体を特定する性能が高くないことは納得です。
勿論、検査自体の熟練度もありますので、練習不足による偽陰性の可能性を無くすために習練は必要となりますが、検査法自体が持つ性能は把握する必要があります。
陽性=ヘルニア!、陰性=問題なし!みたいな浅はかな判断とならないようにしてみてください。
このブログのMenuの中に理学検査法をまとめたページもありますので、興味がある人はご覧になられてみてください。
van der Windt DAWM, Simons E, Riphagen II, Ammendolia C, Verhagen AP, Laslett M, Devillé W, Deyo RA, Bouter LM, de Vet HCW, Aertgeerts B. Physical examination for lumbar radiculopathy due to disc herniation in patients with low‐back pain. Cochrane Database of Systematic Reviews 2010, Issue 2. Art. No.: CD007431. DOI: 10.1002/14651858.CD007431.pub2.