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Ethics of esthetic procedures in pregnancy【妊娠中の審美的治療と倫理】

Tuesday, February 23, 2021

美容整形



 今回は妊娠中の審美的治療の症例

紹介する症例では、妊娠中に審美的治療介入を行い、それらの倫理や安全性などを考察するものとなっています。

これらの結果から妊娠中の女性に対する施術介入へのヒントが得られるかもしれません。

症例①

・27歳の女性

・ボツリヌス毒素A型(BTX-A)やフィラー注射など、審美的処置について専門医に定期的に相談している。

・彼女はテレビに出演する仕事をしている。

彼女にとって、外見は非常に重要なものでありますが、現在妊娠30週、最後にBTX-A注射を受けたのは、妊娠する数週間前のことです。

彼女はBTX-Aの審美的効果が無くなってきていることを自覚し、再度BTX-A治療を要求してきましたす。

担当医は、胎児への影響が十分に研究されていないため、妊娠中はこの治療に反対するようアドバイスしています。

彼女は、その答えに失望し、涙を流しました。

彼女自信で大規模な研究の結果を調べ、「BTX-Aによる重大な胎児リスクはない」と記載されていたことを主張しています。


症例①を考察

BTX-Aは分子量が大きいため胎盤を通過しない可能性が高く、適切な筋肉内または皮内注射後に体循環に存在するとは予想されていません


しかし、妊娠中の患者でボツリヌス中毒症を報告した例は15例あり、先天性欠損症、新生児喪失、先天性ボツリヌス中毒症とは関連していないことがわかっています。

母体のボツリヌス中毒症の2例では、乳児の血清が採取され、ボツリヌス毒素は検出されませんでした


これらのデータは、不注意または意図的な曝露の遡及的レビューから得られたものであり、妊娠初期の症例報告/一連のBTX-A注射のレビューでは、2例の流産が明らとなっています。

この2例では、流産を経験していた女性であったため、ボツリヌス中毒症と関連があるのかは明らかになっていません。


仮に、医師が女性の自律的な決定を優先させたとしても、倫理的には胎児の幸福を優先させるべきと考えられます。

データがあるのでは?と異議を唱える可能性がありますが、このデータはガイドラインとして確たるものではないことから、低いリスクの可能性を無視することは出来ません。



このことから、高品質のデータがなく、胎児のリスクの可能性があるために手順の実行を拒否することは、医師が証拠の不足を認める場合の適切な倫理的選択といえます。


但し、不確実性のある伝達は、患者の自律性を損なわない方法で行われるべきであり、医師は患者に自分の価値観を押し付けようとすべきではありません



よって、医師がより安全であると考える可能性のある別の手順を提案することは、倫理的に受け入れられます。

しかし、殆どの代替審美的介入は、データの不十分さからBTX-Aほど効果的ではありません。


症例②

・女性は現在妊娠27週

以前より脚のクモ状の静脈(静脈瘤など)に悩まされています。

彼女は皮膚科医を訪ね、産後にこれらの悩みが、自然に改善される可能性があることを知っているのにもかかわらず、硬化療法の治療を要望してきました。

医師は、この治療を拒否し、妊娠中に骨盤静脈にかかる圧力が産後解放されて、最も効果的な治療を受けるまで待つのが最善であるとアドバイスしています。

さらに、いくつかの硬化剤溶液が、胎盤を通過する可能性があることを患者に告知しましたが、彼女は妊娠のこの段階では胎児へのリスクはないと信じているため、失望しました。

彼女は脚の悩みを解決できる硬化療法に固執している。


症例②を考察

妊娠中に発生する静脈瘤、細網、およびクモ状静脈は産後改善する可能性があり、治療には妊娠後から少なくとも6~12か月待つ必要があることを示唆しています。


静脈学のドイツの協会によれば、硬化療法は妊娠初期、36週後は禁忌であるとされています。

しかし、テトラデシル硫酸ナトリウムを使用した硬化療法で治療された45人の患者と保守的に治療された56人の患者を比較した研究では、2つのグループ間で妊娠結果に違いは見られませんでした


患者の要求に応じて治療を行った場合、患者の自律性は満たされます。

胎児は生存可能であり、硬化療法にはリスクがありますが、妊娠後期の硬化療法に対する絶対禁忌はありません。

それにもかかわらず、使用されている硬化剤を妊娠中に使用するための安全性に関するデータは不十分となります。


そして、代替治療の選択肢が提案されない場合、治療を拒否すると患者の不満が起こる可能性があります。

保存的な対策方法は文献によって推奨されていものがあります。

長パルスのNd:YAG 1064- nmレーザーなど、より安全な代替治療を提供することは、倫理的に受け入れられますが、そのようなレーザー治療は、深い網状静脈に対する硬化療法ほど効果的ではありません。


まとめ

まるで自分が居合わせるような内容でもありましたが、この2例は女性本人よりも胎児を優先すべきでは?という点と、女性自身の意志を尊重したいというジレンマを表しています。

何を優先させるのか?

そして、介入は安全に行われるものなのか?

妊娠中の審美的治療介入については、更なるデータが集まれば進んで出来るようになるものも増えるということが言えます。

患者対応の中で、着目すべき点を間違えると、患者の信頼や倫理を損なう結果ともなるため、治療技術以外のことも求められている、と感じさせる症例でした。


Kroumpouzos G, Bercovitch L. Ethics of esthetic procedures in pregnancy. Int J Womens Dermatol. 2018;4(4):194-197. Published 2018 Nov 19. doi:10.1016/j.ijwd.2018.10.003

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