今回はサッカー選手のパフォーマンスとマッサージについて
スポーツのパフォーマンスを獲得するために、日々練習に励みます。
しかし、練習に打ち込みすぎると疲労が増加し、疲労軽減のために色々な手法を利用したいという欲求が出てきます。
手法の中には、比較的安全で安易に実行できるストレッチやマッサージがありますが、その効果を測定するとなると非常に難しいことがあります。
難しさの理由として、評価となる項目に感情面が考慮されることから、それらの介入の選り好みで結果が左右されることや、実施する手技自体の再現性の難しさなどもあります。
また、評価される項目として、血液検査なども行われていますが、これらで基準となる数値がそもそも疲労と関連の低いものだったりと、これらを適切に評価することは難しくあります。
とはいえ、多種の研究が行われておりますので、それらの結果を自分の中で判断する指標とし、選択するかどうかを決めればよいかと思われます。
今回紹介するのは、サッカー選手に対するパフォーマンスについて調査しているものとなります。
研究の内容
レバノンとシリアのサッカー選手の間で、ハムストリングの伸展性、敏捷性、および強さに対する深部横摩擦マッサージ(DTFM)と静的、および動的ストレッチング技術の効果を比較する目的となります。
また、二次的な目的として、非接触ハムストリング筋損傷の発生率を記録することも含まれています。
研究は単一盲検の前向き縦断的ランダム化比較試験で行われています。
実験は4週間にわたって行われました。
サッカー選手は、3つの介入グループ(静的ストレッチ、動的ストレッチ、DTFM)にランダムに振り分けられました。
各グループの参加者は、介入セッション中に週に3回、合計12セッションの間、およびデータ収集中に、評価者によって注意深くフォローアップされました。
拡張性、敏捷性、および強さはと(ベースライン;急性;および慢性)段階で介入グループ間で比較されました。
ストレートレッグレイズテストと1回の繰り返し最大テストを使用して、優勢な脚のハムストリング筋の伸展性と最大強度をそれぞれ測定しました。
Tドリルテストは、下肢の敏捷性を評価するために使用されました。
18~35歳までの103人のレバノン人とシリア人の男性サッカー選手のうち、ダマスカス-シリアとレバノン南部からサンプリングされました。
急性強度(P = 0.011)と慢性伸展性(P = 0.000)のグループ間測定値は、有意差のみを示し、静的グループは他のグループと比較して優れていることが示されました。
フォローアップの損失やプロトコル違反は記録されませんでした。
著者の結論
静的ストレッチングは、長期的な拡張性と短期的な最大筋力の獲得に関して、使用されている他の手法よりも優れていることが示されています。さらに、DTFMは改善を示しましたが、静的および動的な手法と比較した場合、サッカー選手のパフォーマンスへの影響を上回っていませんでした。最後に、筋肉損傷の発生率に関して、介入間の違いは記録されていません。
まとめ
比較された方法の中では、静的ストレッチの利点が最も目立つような形になりましたが、静的ストレッチとマッサージを組み合わせる方法でも有意な結果となっていました。
筋パフォーマンスを測定するために、筋肉の長さが伸びるためにこれらの方法が良いという結果だったため、限定的な結果といえど有用足り得るかもしれません。
疲労回復や受傷予防という点では、どれも変わらない結果となったようなので、あくまでもパフォーマンス面ということ。
そういった認識のもと実施していきましょう。
Fakhro MA, Chahine H, Srour H, Hijazi K. Effect of deep transverse friction massage vs stretching on football players' performance. World J Orthop. 2020;11(1):47-56. Published 2020 Jan 18. doi:10.5312/wjo.v11.i1.47