KeiS a medical professional

This is a blog about the scientific basis of medicine. A judo therapist reads research papers for study and writes about them.

sponsorlink

Cost-Benefit of Hiring Athletic Trainers in Oregon High Schools From 2011–2014【ATを雇う費用対効果】

Wednesday, February 24, 2021

運動



今回はアスレティックトレーナーと費用対効果について 

皆さんはアスレティックトレーナーという資格はご存じでしょうか?

所謂スポーツトレーナーという資格の1種になるのですが、

公認スポーツ指導者制度に基づき、JSPO公認スポーツドクター及び公認コーチとの緊密な協力のもとに、競技者の健康管理、外傷・障害予防、スポーツ外傷・障害の救急処置、アスレティックリハビリテーション、体力トレーニング及びコンディショニング等にあたる。

公益財団法人 日本スポーツ協会より 

といったことを行うことが出来る資格となります。

スポーツ現場で、トレーナー活動をしている人間や、整骨院でスポーツ障害のケアをしてもらった人が憧れてとる資格で、スポーツ現場でトリートメントなどを行うために取る資格でもあるようです。


資格至上主義と考える人が多い日本では、この資格は人気があり、柔道整復師や鍼灸師、理学療法士などの資格を持つ人がさらに受講するということも少なくはありません。


紹介する論文では、アスレティックトレーナー(AT)を高校に配置することで、医療費などの節約になるのか?ということについて調査しているものがありました。


日本では、少子化の影響から学校数も減ってきており、狭き門となる上述のことがどういった費用対効果を生んでいるのか?ということで、今から資格を取る人、ATを雇おうか考えている人にとって参考になるかと思われます。


研究の内容

高校でATを雇うと、怪我のリスクを減らし、公的機関や民間で受ける医療に掛かる費用を下げる、専門機関への紹介が増えるため医療費を増やすことがあります。


医学的主張の分析に基づいた高校でATを実際する経済的効果に関する証拠は不足しているため、それを調査したものとなります。


オレゴン州保健局のAllPayer All Claimsデータベースから2011〜2014年の限定データセットを分析しました。

対応のあるt検定を使用して、オレゴン州の高校でATを採用している期間と採用していない期間の請求支払いを比較しました。

また、ATへの投資を調整するために、ATの取り組みの割合を使用しました。

主な結果の尺度は、高校でのATの採用に関連する投資収益率でした。

 

オレゴン州の高校にATが在籍することは、メディケイドと商業保険の医療費に異なる影響を及ぼした可能性があります。


2011年から2014年にかけてオレゴン州の公立高校でATを雇うために投資され、メディケイドの支払いは月額24セント増加し、商業保険の支払いは統計的に有意ではありませんでしたが24セント減少していました。 


結果から、高校のアウトリーチモデルでATを採用しても、必ずしもメディケイドや民間保険会社の医療費を節約できるとは限りません。

研究におけるコスト削減の欠如が雇用モデルの要因であったのか、医療利用の増加に起因したのか、またはATがより多くのオンサイトATサービスを提供する必要性を反映したのかを判断するには、さらなる研究が必要となります。


考察

まず、研究対象国と日本では事情が異なってくることから、この結果は日本で鵜呑みに出来ないということです。

とはいえ、研究結果としてATの費用対効果、という数値だけで見るとメリットは無いようにも見えました。

実際は、スポーツ現場で緊急性の高い負傷などをした場合は、傷害の評価や応急処置や救急車の手配などを行ったりすることから、無意味であると結論を出せるものではありません。

そういった側面ではATを雇用することに否定的な面はないと思われますが、人によってはそういった緊急事態は頻発することでないから、監督する人間が応対できればいいからATいらね、となることも考えられます。


情報過多な時代ですから、応急処置に必要な知識や傷害の度合いなど浅い範囲で確認することは出来ます。

ATの練度が低ければ、猶更無資格者でも同じでは?という意見もありそうです。


本当はそういったことだけではない、ということを理解してもらえれば、高校などのスポーツ現場でもATの採用は増えてくるのかと思われます。

現状だと、スポーツ強豪校のような、競技に理解がある、力を入れている私立高校などでの採用が一般的なのかもしれません。

そして、多くのスポーツトレーナーがボランティアでトレーナーをやっていることも普及の障壁を高めているのかもしれません。


偏見かもしれませんが、日本のスポーツ競技関係者は米国でスタンダードであることが分かり、知り合いの高校関係者でATを配置していることをしればATの需要は増えてくるのでは?と思っています。

※筆者は柔道整復師の業務内容と同様の点もあることから、ATを取っていません。

まとめ

こういった結果もある、ということをご存じいただければ、現状のスポーツ界隈で起きている医療関係者の採用も増えてくるきっかけとなるのかもしれません。

一面だけを見ると否定的である結果となっていますが、別の面から見るとそうでもなかったりしますので。

Li T, Norcross MF, Johnson ST, Koester MC. Cost-Benefit of Hiring Athletic Trainers in Oregon High Schools From 2011-2014. J Athl Train. 2019;54(2):165-169. doi:10.4085/1062-6050-390-17

QooQ