今回は石灰化と肩部痛について
外傷がない肩部痛として、多種にわたる原因を考えないといけませんが、そのうちの1つである石灰化ということも忘れてはいけません。
石灰沈着性腱炎ともよばれていますが、この症例は殆どが病院などで対応している治療に適応されるため、私らのような柔道整復師は対応することが難しいです。
一般的には回旋筋腱板の腱に起きるものとしてされていますが、そうではない症例がありましたので紹介します。
石灰沈着性腱炎とは?
石灰沈着性腱炎は、肩部痛の原因ともされる一般的な症状です。
症状に関与するカルシウム沈着は、ヒドロキシアパタイト結晶が回旋腱板腱内に見られるが、稀に肩の周りの他の腱で見られることがあります。
報告されている症例のうち、三角筋の近位挿入部位周辺の石灰化の症例は文献で報告されていません。
ここでは、保守的な管理によってうまく治療された左三角筋の前肩峰への挿入部位での石灰化の症例を紹介します。
症例
・45歳の男性
・右利き
初診日から2日前の朝、目覚めたときに突然の左肩の痛みを感じました。
その後、痛みが悪化したと訴えて受診しました。
この男性は、肩の周りの代謝性疾患や外傷の病歴はありません。
身体検査では、110°の制限された前方屈曲、30°の伸展、110°の外転、30°の外旋、およびL2への内旋など明らかになりました。
痛みの数値評価尺度は、安静時3/10、運動時7/10、夜間5/10です。
肩峰の前面付近に圧痛が認められました。
左腕を高い位置に置いた単純X線写真では、肩峰の前面に石灰化が確認されましたが、前後(AP)X線写真では正常な外観が示されていました。
超音波検査にて、左三角筋の前肩峰挿入部の小さな高エコー病変とカルシウム沈着物の周りの血管過多が明らかになりました。
なお、超音波検査で回旋腱板断裂、肩峰下滑液包炎は観察されませんでした。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)と、石灰化の周囲にトリアムシノロンアセトニド(15 mg)と1%リドカイン(3 cm 3)の局所注射を行いました。
治療の数日後、患者の痛みは劇的に改善し、全可動域が回復しました。
それから3年間、症状の再発は認められず、フォローアップ時の単純X線写真は石灰化の完全な消失を示しました。
まとめ
この症例では、石灰化による炎症を抑える薬の投入により、疼痛が改善し、カルシウム沈着物も無事吸収されたというものでした。
この症状で、聞いたことがある症例では同じ保存療法でも徒手療法で改善した!みたいな報告を聞いたことがありますが、今回のようなネット上で閲覧も出来なかった上に、どこからの情報なのかもわかりませんでした。
徒手療法による効果がどうなのかはわかりませんが、私が臨床で修業を積んだ院では、石灰沈着性腱炎の疑いがある場合は即専門施設に紹介する!って教わりました。
今後、同症状と疑うことがあったとしても、この症例のように注射にて軽快出来るならば、そちらの方が適切かと考えられますので、そうしていきたいとは思いました。
しかし、カルシウム沈着する部分を決めつけないようにしないとなって勉強して症例でしたね。
Yukata K, Suthar A, Suetomi Y, Yamazaki K, Doi K, Fujii H. Calcification of the Anterior Acromial Insertion of the Deltoid Muscle. Case Rep Orthop. 2020;2020:8895801. Published 2020 Oct 10. doi:10.1155/2020/8895801