今回は感染症とビタミンDについて
研究の内容
研究①
4件の試験が選択され、参加者は5歳未満の小児、計3198名を対象としたものです。
アフガニスタン、スペイン、米国で実施されたものとなります。
ビタミンD欠乏症の有病率は、対象集団によって大きく異なっていました。
・アフガニスタン73.1%
・米国10〜12%
・スペイン6.2%
対象試験では死亡率、肺炎の発生率、下痢の発生率、入院、血清ビタミンD濃度を評価したものです。
イベント数が少ないため、アウトカムの検出力は低くことから、ビタミンD補充が総死亡率に影響を与えるかどうかは不明となります。
肺炎については、補充群と非補充群の間で差はほとんど認められなかった。
同様に、肺炎の診断が下った小児と、肺炎と疑われている段階の小児の間でも差はほとんど認められなかった。
また、2つの試験からは、下痢について補充群と非補充群の間に明らかな差は認められなかった。
しかし、アフガニスタンで実施された1件の大規模試験では、ビタミンD補充療法が、胸部X線で診断された肺炎の再発増加と関連していることが試験著者によって報告されています。
1件の小規模試験で評価され、入院については、差が認められなかった。
ビタミンD補充群では、補充終了時における、平均的な血清ビタミンD濃度が非補充群と比較して高かった。
比較的大規模で行われた2つの試験では、介入群の血清ビタミンD濃度は、試験期間の大部分において上昇したが、補充終了時には濃度が下がっていました。
この原因として、最終投与からの経過時間、コンプライアンス不良、幼児の成長に伴うビタミンD要求量の増加が挙げられています。
結核、マラリアおよび発熱性疾患の発生率、肺炎の期間、下痢の期間、感染の重症度、ならびに死因別死亡を報告した試験はなかった。
研究②
1529人の子供を対象としたものであり、低所得国で実施された7件のRCTを含める研究をレビューしています。
※肺炎の780人と重度、非常に重度の肺炎の749人
4つの研究では、病気の発症時、または入院から24時間以内にビタミンD3を1回投与しています。
2つの研究では、5日間、経口ビタミンD3を投与しています。
1つの研究では、1日量の経口ビタミンD3を2日間に跨いで使用しました。
このうちの研究では、肺炎の微生物学的および放射線学的診断が報告されました。
対照と比較した場合、ビタミンDの効果は決定的といえません。
※急性疾患の発症から治癒までの時間、死亡率、入院期間、解熱までの時間といった評価
重大な有害事象は報告されていません。
レビューアの結論
1件の大規模試験から得られたエビデンスからは、5歳未満の小児における肺炎および下痢の発生率に対するビタミンD補充の有益性は示されなかった。把握している限りでは、結核およびマラリアを含む感染症の予防に対し、ビタミンD補充を評価した試験は実施されていない。
Yakoob MY, Salam RA, Khan FR, Bhutta ZA. Vitamin D supplementation for preventing infections in children under five years of age. Cochrane Database of Systematic Reviews 2016, Issue 11. Art. No.: CD008824. DOI: 10.1002/14651858.CD008824.pub2. Accessed 01 February 2021.
その②
結果が不正確だったため、ビタミンDが結果に重要な影響を与えるかどうかは不明です。重大な有害事象は報告されていません。エビデンスの質を非常に低いものから低いものまで評価しました。いくつかの試験が進行中であり、追加情報を提供する可能性があります。
Das RR、Singh M、Naik SS 急性小児肺炎の治療のための抗生物質の補助剤としてのビタミンD。システマティックレビューのコクランデータベース2018、第7号。アート。番号:CD011597。DOI:10.1002 /14651858.CD011597.pub2。2021年2月1日にアクセス。