今回は理解していたいナショナリズムについて
ナショナリズムとは、帰属意識のことになります。
それは歴史、言語、領土、文化を共有し、人々が抱く意識のことです。
これがどのように働いており、良い面、悪い面がどのようなことなのかを理解することで、自分の置かれている環境に気付けることが出来ます。
ナショナリズムとは
前述した帰属意識のことで、それは人々をまとめ、愛国心や連帯意識を生み出す前向きなものとなることもあれば、暴力や民族紛争につながることもあります。
民族間のような規模の大きな話になることもあれば、コミュニティのような身近なものにでも起こっていることです。
これは、心理的に人間が集団に属することを好むことにから起こるものです。
社会的にカテゴリーによる区分をし、自分の属する集団(内集団)それ以外の集団(外集団)と過大視しやすくもなります。
考え方によっては、集団の結束が強くなりますが、一方では差別が悪化することにもなります。
内集団が形成されると、外集団を脅威とみなすことがきっかけとなり、自分たちの集団が優れている、他の集団は悪の根源のように扱うようになります。
そして、土地や富、経済的、社会的、政治的な不平等さはこれに拍車をかけます。
こういった問題は「話し合い」により解決できないまで悪化し、結果戦争やジェノサイドまで発展します。
ナショナリズムが激化する流れ
これら6つの要素が、ナショナリズムを激化することになります。
1.分裂の火種
この社会には、政治的・宗教的に異なる人が暮らしています。
この違いは、経済不安、戦争、革命などをきっかけに明るみに出ることになり、内集団/外集団を区別する考え方が広まります。
2.社会の分裂
1との違いは、内集団と外集団の区別が既に形成されていることになります。
そういった区別を指導者が利用するときに、社会的に危機的分裂を引き起こすことになります。
3.隣に住む「よそ者」
内集団と外集団が区別されると、それぞれの集団に属する人は相手を「よそ者」「外部の人間」と見るようになります。
こういった集団の隔たりは、人の人間性を否定し始めます。
4.外集団のステレオタイプ化
外集団の人間性を認めなくなると、相手を肌の色や幾つかの固定的、かつ単純化した特性で括るようになります。
こうなってくると、内集団の人は外集団の人間を憎み、恐れる、などの悪の権化と見なすようになります。
5.外集団への責任転嫁
外集団をステレオタイプを通して捉えているため、内集団が抱える問題などを責任転嫁する対象としてみなすことになります。
そうしてから、外集団が問題を起こしていると、内集団の怒りはより高まってくるものになります。
6.外集団の排除
外集団は、ついに内集団による残虐行為の犠牲となります。
これは社会大勢から排除され、同じ人間と認められないという感情からくるものです。
現実として、第二次大戦中のユダヤ人大虐殺として現れたこともあります。
民族間だけではなく、小コミュニティでも起こりえている事柄として捉えて下さい。
差別と社会階層
社会の中にいる個人・集団は、人種、民族、国籍、性別、年齢、性的志向、階級といった性質を基に互いに差別し合うことが多いです。
こうなるのは、家族、仲間、社会の全般的な規範、価値観と関わっている中で培われるものであり、強固な社会階層を生み出しています。
立場として、支配的な立場にいる人は、社会的・政治的制度が「自分」たちに最も利益になるように社会階層を維持しようと努力します。
このため、影響力や優位性を高めるために、ステレオタイプ、偏見、外国人への嫌悪・恐怖、自分たち以外の人種を低く評価する信念を煽ります。
しかし、近年では人々の平等や基本的な人権を確立するための運動が、多く行われています。
こうした中で社会の多様性は増してきているため、人は人々の許容力を高めていく傾向にあります。
残念ながら、多様性が増してくると内集団/外集団の区別をなくすことは難しくなってくるということもいわれています。
偏見の尺度
心理学者ゴードン・オールポート氏は、社会の偏見が差別行動、暴力、特定の人種に対する憎しみ、ジェノサイドまで発展していくプロセスを多様な面から研究していました。
これらの段階を紹介します。
1段階「誹謗」
言葉による暴力、悪意のある噂話、流言、侮辱的な呼び名、ステレオタイプ化、失礼な冗談など。
2段階「回避」
特定の集団に属する人々を、社会的に拒絶し、存在しないかのように扱うこと。
3段階「差別」
雇用、教育、医療保健、住居、公共サービスなどにおける差別として、「受け入れ拒否」ということがある。
こうした差別を認めている法律が作られていることもあります。
4段階「攻撃」
とある集団に人、所有物に対する暴力・破壊行為、身体的暴力が伴ういじめ、暴行、レイプも起こる。
5段階「絶滅」
とある集団を標的とした大規模な暴力にまで発展する。
その集団を根絶する目的で大量殺人へと発展していく。
まとめ
ヒトは集団に対する所属意識が、心理的な強い満足を齎すことから、ナショナリズムは人々を驚くほどの力で人々を結束させることがあるものです。
しかし、ナショナリズムは差別や偏見が生まれるきっかけになることもあります。
先述した心理学者のゴードン・オールポート氏は「自身で偏見を認識し恥じないと、偏見は解消されない」ということを言っていました。
以上のことから、どうして差別や偏見が生まれるのか?人の帰属意識とは?について多少はわかってきました。