今回は生物学的治療方法について
精神疾患を治療する際に、選択される治療法である「薬物療法」について紹介します。
そもそも精神疾患には、生物学的要因、身体的要因が影響するということに基づいた治療法として、「生物学的治療法」治療法というものがあります。
そんな生物学的治療法の中に薬物療法があり、精神疾患を罹患した人は何かしらの治療薬を服用したことがあるかもしれません。
自分自身、家族、友人、同僚、上司、部下、顧客などにこういった治療薬を飲んでいるとすれば、こういった働きで副作用は何なのか?ということを理解していきましょう。
薬物療法の分類と詳細
精神疾患の特定の症状の軽減するために施行される薬物療法ですが、薬物を服用しても原因となる心理的要因は取り除かれることがありません。
しかし、生活や仕事を行う上で、患者の問題に対処するなかでプラスに働くことがあるので処方されます。
抗うつ薬
鬱病(落胆した気分、無快感症、絶望感など)、不安症に処方されることがあります。
作用
脳における神経伝達物質を増やす働きがあります。
セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの「快感」に関与する神経伝達物質に影響があります。
効果として、気分が上向き、幸福感が高まります。
意欲や楽観性、活力が増す、睡眠のリズムが整うなどの働きもあるとされています。
副作用
体重が増え、眠気、性欲の減退、オルガズムを得にくくなります。
睡眠障害や口渇、吐き気、頭痛といった症状が出ることもあります。
抗神薬
双極性障害、統合失調症、幻覚・妄想・思考の混乱・気分の変動がある症状に処方されることがあります。
作用
ドーパミン受容体を阻害する働きがあります。
これは、ドーパミン神経系の過剰活動が精神病変を誘発するからと考えられているからです。
効果として、幻聴や幻視が減り、気分が安定し、思考の明晰さが改善する働きがあります。
副作用
苛立ち、不安定な気分などの精神的な影響が出ます。
さらに、神経系や筋肉への影響、体温調節の問題、眩暈といった症状が出ることがあります。
抗不安薬
全般不安症、パニック症、社交不安症、PTSD、OCD、恐怖症などに処方されることがあります。
作用
薬剤の種類により働きが異なるため、処方された薬剤の把握は必要です。
主に、神経伝達物質の働きを調整するもの、身体症状を抑えるものがあります。
効果として、ストレスへの対処、問題解決、筋肉の緊張を和らげる、精神的な刺激への反応を減少させるなどがあります。
副作用
眩暈、体の平衡感、協調運動の悪影響、発話不明瞭、記憶障害、集中が出来ない、離脱感などの症状が出ることがあります。
気分安定剤
双極性障害、統合失調症、鬱病、発作性障害に関連する気分障害などの治療に処方されることがあります。
作用
薬物の種類により働きが異なるため、処方された薬剤の把握は必要です。
主に、ドーパミンなどの神経伝達物質の調節、気分を安定させる作用のある物質を増やすなどに働きます。
効果として、躁病の症状の軽減、躁鬱エピソードの循環を防ぐなどがあります。
副作用
体重が増え、感情的な反応がなくなる、口渇、ニキビ、落ち着きがなくなる、性機能不全、日光過敏などの症状が出ることがあります。
中枢神経興奮薬
ナルコレプシー、ADHDに処方されます。
作用
ドーパミン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の増加、活動を促進します。
効果として、覚醒度、集中力の向上、思考が明晰になり、秩序立ったものになり、活力が増すといった働きがあります。
副作用
不安、不眠、食欲喪失、体重減少、心拍数増加、顎振戦といった症状が出ます。
睡眠薬
睡眠障害に対して処方されます。
作用
ヒスタミン作用の抑制、GABAの働きを増強、メラトニンに作用する働きがあります。
入眠や睡眠の持続を促す働きがあります。
副作用
記憶の喪失、日中の眠気、店頭の危険性が増す、薬物耐性や依存症の危険性があります。
認知症治療薬
認知症に関連する症状の軽減や病気の進行を緩和するために処方されることがあります。
作用
コリンエステラーゼの働きを抑制する働きがあります。
コリンエステラーゼとは、記憶に深く関わりのある神経伝達物質である、アセチルコリンを分解する酵素のこと。
効果として、認知機能の低下を遅らせます。(根治が目的ではありません)
副作用
体重減少、吐き気、嘔吐、下痢といった症状が出ることがあります。
薬物療法で効果がない場合の治療として
精神科で行われる薬物治療として、前述してきたような薬剤が使用されますが、効果が得られない場合は脳の電気信号や物理的に妨害・促進する治療法が選択されることがあります。
脳に弱い電流を流すECT,TMSといった方法や、外科的に施術するといった方法があります。
まとめ
今回の記事をまとめていて、再度知ったのは精神科の疾患に対する薬物療法には作用よりも副作用が盛りだくさんである薬剤が多いということ。
副作用を打ち消すために、新たな薬剤を投与するなどもあり得ますし、薬剤の作用で期待される効果よりも心理的影響の大きい副作用の方が気になることもあります。
冒頭にも記述していますが、薬物療法では根本原因である心理的要因を解決はできません。
周囲の理解が~ということは言いませんが、医療従事者としてはこれらの疾患をもっている患者に対する心構えとして、薬物療法の作用と副作用や疾患の概要などは把握していたいものです。