今回は医師と患者の信頼感について
紹介する研究論文の内容は中国における医師と患者のコミュニケーションなどについてです。
以前も同じような記事は書きましたが、今回は行動科学の観点から書かれているものであり、具体的な理由が述べられているので多少わかりやすいもの。
えぇ~中国~と偏見を持つ方もおられるかもしれませんが、
特定分野においては中国の医療も先進的な動きがあり、日本にもその技術や知識は応用されているため、変な偏見は持たない方が良いかもしれません。
では内容を紹介します。
研究内容
・7人の医師にインタビューとアンケートをとり、187例の患者とのコミュニケーションがどうだったのか?ということを検証したもの。
結果から言いますと、項目のうち以下のようなスコアが観察された。
・患者からの情報収集2.19
・患者教育2.02
・コミュニケーションスキル1.97
研究者らは予想よりも低いスコアにそれぞれの原因を追究した。
患者からのデータ収集
少し日本とは異なりますが、患者が自分の症状を記述した文書(問診票など)を持ち込むことを忘れ、医師が改めて訪ねる必要があった。
日本で言えば、問診票を見ずに質問だけで症状を決めつけるような医師。というイメージで。
治療計画
患者と医師が一緒に治療計画を立てることに参加した患者の数は全体の53%。
それは58%の医師がその場で身体検査を行い、72%が精密検査を受けるよう患者に依頼したという背景もある。
症状説明
医師が患者に検査結果などから症状を説明したのは62%。
パンフレットなどで症状を説明した医師はいません。
そして、説明されたことを理解できた患者は7%で、医師に質問を許されたのは1%のみという結果に。
コミュニケーションスキル
医師の88%がアイコンタクトを使用、
16%が雑談をし、19%で個人的な感情で思いやりを示していた。
その中から患者と長期的な付き合いになるのは3%、患者が話している時に会話を遮ることが16%、その場にいて患者との関係がない人との会話が7%、説明なしの専門用語の使用が6%、患者からの質問を無視するが6%でした。
これをどう捉えるかですね。
では何故このような数値が出ているのでしょうか?
〇理由1「高負荷な作業」
〇理由2「患者が医療に対するリテラシーが低い」
〇理由3「医師自身がコミュ障という自覚」
〇理由4「トラブルから自分を守るための防衛行動」
上記に関してはそこまで解説しなくても判って頂けると思いますが、
医師自身のコミュ障に関してだけ。
自分がコミュニケーションスキルに自信がない。と自覚している医師は、コミュニケーションスキルは生まれつきに身についているもので、トレーニングによって身につくものではないという「思い込み」がありました。
そういう理由で、大学などでコミュニケーションスキルを学ぶ機会があっても積極的に受講するなどの行動がありません。
その結果
2015年の中国医師会の報告では、医療スタッフの60%が患者に暴言を言われ、
7%のスタッフが患者からの暴行を経験したという報告もありました。
こういった問題からこの研究が行われたという背景です。
まとめ
上記に書いている項目の%数値をどう捉えますか?
医療従事者としては限りなく100%に近づけたい項目が多かったですが、
忙しい、余裕がないを理由に目を背けていませんか?
頭からこういったことを否定する医師は、「高負荷な作業」を理由に解決する気はない人もいます。
それは患者にとっては大変不利益たるものになります。
そこで必要だと思うのは、患者側の医療に関するリテラシーを高めるということ。
これも1つです。
私自身の経験上ですが、医療従事者を患者として迎え入れた時のあのスムーズさと言ったら他では経験していないものでした。
みんながそうだ!とは思っていませんが。
上記の数値から医療従事者たちは問題点が想像つくはずですから、
こういった結果も参考になるはずです。