福島第一原子力発電所事故による放射線を受けた野生動物のDNA損傷とストレスの評価。
Assessment of DNA damage and stress in wildlife chronically exposed to low-dose, low-dose-rate radiation from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident
DOI:https://doi.org/10.1016/j.envint.2021.106675
内容
環境放射線への慢性的な低線量・低線量率(LD-LDR)被曝に関連する健康影響は不確かであり、管理された実験室条件下以外で実施される線量効果研究はすべて、生態系特有の複雑さや自然環境下で放し飼いにされている生物の線量を定量化することの難しさが課題となっています。
そのため、LD-LDRによる慢性的な放射線被曝が野生動物の健康に及ぼす影響については十分に理解されておらず、多くの議論が続いています。
本研究では、2016年から2018年にかけて、日本の福島の放射線被ばく量の勾配を越えて、イノシシとネズミヘビのサンプルを採取しました。生体内のDNA損傷とストレスのバイオマーカーを、放射線量の複数の測定値の関数として評価しました。
これらの生物学的パラメータにより、捕獲時の放射線量率ともっともらしい生涯上限線量のロバストな計算結果を相関させることができ、いずれも内部被ばくと外部被ばくを取り入れたものであります。
その結果、二動原体染色体の頻度、テロメアの長さと捕獲時の線量率および生涯線量との間には有意な関係は認められませんでした。放射線被曝はコルチゾールとのみ有意な関係があり、低濃度は高線量率と関連していたが、この関係は他の要因によるものである可能性が高いとのことです。
これらの結果から、人間の居住を禁止するに足るLD-LDR放射線を慢性的に浴びたイノシシやヘビは、DNA損傷やストレスのバイオマーカーで評価した場合、健康に大きな悪影響を及ぼさないことが示唆されました。