肥満による炎症とワーキングメモリーの低下の悪循環。
Obesity, Inflammation, and Working Memory: Evidence of a Vicious Cycle
https://doi.org/10.1016/j.bbih.2021.100202
内容
体重過多と肥満は、予防可能であるにもかかわらず、世界の死亡原因の第5位を占めています。太りすぎが健康を害する経路の一つとして、炎症活動と認知プロセスの変化が挙げられます。
これまでの理論では、肥満によって炎症活性が高まり、それがワーキングメモリなどの認知プロセスを変化させ、さらに体重を自己調整して管理する能力の低下につながるという悪循環が提唱されていました。しかし、このような潜在的な動きを調査した縦断的な研究はありません。
この研究では、Avon Longitudinal Study of Parents and Childrenに登録された8536名の青年を対象に、脂肪量、CRP(C-reactive protein)、ワーキングメモリの経時的な関係を評価することで、このギャップを解消しました。
脂肪量は、9歳と15.5歳の時点で二重放出X線吸収法(DEXA)により定量化し、炎症活動は、同年齢で高感度のアッセイを用いて評価した循環血中CRPレベルにより指標化していました。
ワーキングメモリは、この2つの時点の間、10歳の時点で評価し、ワーキングメモリ、肥満、炎症活動の時間的な関係を調べることができました。
その結果、脂肪量はその後のワーキングメモリの障害を予測し、この関連性はCRPによって統計的に媒介されることがわかりました。さらに、ワーキングメモリの障害は、その後の脂肪量とCRPの増加を予測し、ワーキングメモリとその後のCRPとの関連は脂肪量によって部分的に媒介されると示されました。