肥満は薄毛を加速させます。
Obesity accelerates hair thinning through a stem cell-centric convergence mechanism
Morinaga H., Mohri Y., Grachtchouk, M., et al. Obesity accelerates hair thinning by a stem cell-centric convergence mechanism. Nature (2021). https://doi.org/10.1038/s41586-021-03624-x
内容
この研究では、肥満と毛髪の関係を調査していました。肥満が多くの加齢性疾患の感受性を高めることは一般的に知られていますが、臓器の機能障害に対する影響はよくわかっていません。
脱毛は、加齢に伴う毛包の微細化と毛包幹細胞(HFSC)の枯渇によって引き起こされます。そして、高脂肪食(HFD)を摂取することで生じるストレスは、HFSCを標的として薄毛を加速させることが報告されています。
時系列の遺伝子発現解析によって得られた結果によると、幼若マウスにHFDを4日間連続で投与すると、活性酸素が過剰に発生し、活性化したHFSCが表皮の角化に向かうことがわかったが、HFSCsのプールは減少しなかったとのことです。
幹細胞の運命追跡、エピジェネティクス、リバースジェネティクスを用いた統合的な解析により、HFFDの追加投与は、オートクラインおよびパラクラインのIL-1Rシグナルを介して、HFSCs内の脂肪滴とNF-κBの活性化を誘導することが明らかとなりました。
これらの統合された要因は、HFSCsにおけるソニックヘッジホッグ(SHH)シグナルの顕著な阻害に収束すると説明しています。この作用により、脂質を含むHFSCsが異常に分化することでさらに減少し、毛包の小型化と最終的な脱毛が引き起こされると言います。逆に、SHHをトランスジェニックまたは薬理学的に活性化すると、HFDによる脱毛が回復することから、これらのデータを総合すると、肥満による幹細胞の炎症性シグナルが臓器再生シグナルを強く抑制し、小器官のミニチュア化を加速させることを示しており、臓器の機能障害を予防することの重要性を示唆しています。
ただし、ヒトを対象とした実験ではないので、この結果が同様となるかは不明ですが、高脂肪食の影響が多く報告されていることを念頭に置き、摂取を控えることが必要だと思います。