抗うつ剤への曝露は、ザリガニの行動を変化させる。
Exposure to common antidepressants can alter the behavior of crayfish and subsequently affect the ecosystem
Reisinger, AJ, Reisinger, LS, Richmond, EK, and Rosi, EJ. 2021. Exposure to common antidepressants can alter crayfish behavior and affect subsequent ecosystems. Ecosphere 12(6): e03527. 10.1002 / ecs2.3527
解説
この研究では、水生環境に遍在する医薬品が生態学的プロセスに及ぼす影響を調査していました。
対象となった医薬品は、抗うつ剤としても頻繁に処方される選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)で、この医薬品がザリガニの行動を変化させることがわかっています。
ザリガニは淡水の生態系で中心的な役割を果たしているため、行動の変化が河川にも影響を与える可能性があります。本実験では、14日間の人工河川実験でRusty Crayfish(Faxonius limosus)をY字型水路に曝露し、SSRI曝露がザリガニの行動や餌・同種の嗜好に与える影響を定量的に評価するとともに、SSRI曝露が生息地別および河川全体の生態系機能やバイオマスに与える影響を明らかにしました。citalopramとザリガニの相互作用が、生息地固有および河川全体の生態系機能とバイオマスに及ぼす影響を検証しました。
その結果、SSRIに曝露したザリガニは、曝露していないザリガニに比べて、大胆さ(シェルターから出てくるまでの時間、P<0.05)が増加し、餌資源の方向付けに多くの時間を費やしました。
ザリガニは水柱のクロロフィルa(P < 0.01)と底生有機物(P = 0.03)を増加させ、さらにザリガニは水柱の呼吸を増加させる可能性があることがわかった。(P = 0.09) また、潜在的に硝酸塩の取り込みも減少した(P = 0.05)。SSRI暴露は底生生物のクロロフィルaを増加させたが(P = 0.07)、ザリガニとSSRIの有意な相互作用は見られなかった。
ザリガニもSSRI投与も,河川の総代謝には影響しませんでした。
これらの結果から、citalopramは藻類のバイオマスに影響を与える可能性はあるが、生態系の機能には影響を与えなかったと考えられますが、ザリガニが様々な反応指標に影響を与えたことから、SSRI曝露によって誘発されたザリガニの行動の変化が、その後の生態系レベルの影響につながる可能性があると考えられました。
実験期間が短かったため、調査期間中にザリガニの行動変化の影響を生態系スケールで検出することができなかったため、医薬品の亜致死および長期的な生態系への影響を定量化するためにはさらなる研究が必要であると述べられています。