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How does subacromial decompression surgery compare with exercise therapy for adults with rotator cuff tears?【回旋筋腱板と肩峰下減圧術】

Monday, February 8, 2021

整形外科



 今回は肩峰下減圧手術と回旋筋腱板について


肩の痛みの1例として、回旋筋腱板の損傷というものが挙げられます。

上腕骨と肩甲骨の安定性の役割を持っていたり、筋トレ好きな人なら回旋筋腱板の構成筋4種もスラスラ言えるぐらい有名なものです。

しかし、肩の痛みには回旋筋腱板の損傷だけではなく、近接する軟部組織の損傷が由来となることもあります。

その1つに上腕骨と肩甲骨が関節しているやや上に、肩峰と呼ばれる体表から触知できる骨指標があります。

肩峰の直下には靭帯や滑液包などの軟部組織が配置されており、上腕が動作するにあたってスムーズに動いたりすることに役に立っています。

そういった部分も損傷することがあるため、何らかの処置が行われますが、紹介するレビューでは肩峰下減圧術と手術をしない場合の比較を行っております。


研究の内容

これらの研究はデンマーク、フィンランド、ドイツ、ノルウェー、スウェーデン、英国の病院で実施されました。


手術とプラセボ(偽)手術または肩腱板断裂腱板断裂のある人の運動などの他の非手術的治療とを比較した8件の試験から1062人の参加者を対象にしたものです。


参加者の平均年齢は42~65歳、追跡期間は1~12年程となります。


5件の試験は資金源の報告に失敗し、3件は非営利財団から資金提供を受け、1人の試験著者は計測会社から支払われました。


結果として、2件の試験(506人の参加者)が、手術とプラセボの比較を行っていました。

肩峰下減圧術は、1年間のフォローアップでほとんど利点がないことを示唆していました。


・痛みに関しては、(スコアが低いほど痛みが少ないことを意味する)

3%(3%悪化から8%改善)、または0から10のスケールで0.26ポイントの改善


プラセボ術を受けた参加者は自身の痛みを2.9ポイントと評価しました。

手術を受けた参加者は自身の痛みを2.6ポイントと評価しました。


・機能性に関しては、(0~100:スコアが高いほど機能が優れていることを意味する)

3%(1%悪化から7%改善)または3ポイント改善


プラセボ術を受けた参加者は、自身の機能性を69ポイントと評価しました。

手術を受けた参加者は自身の機能性を72ポイントと評価しました。


・治療が成功したかどうか、(良い、まったく問題がないなど)

5%の参加者が治療は成功した、(5%少ないから16%多い)、または5/100人が成功したと述べた。


66/100人が、プラセボ処置後に治療が成功した言っていました。

71/100人が、手術は成功したと言っていました。


・生活の質に関しては、(スコアが高いほど生活の質が高いことを意味します)

-0.59/1のスケールで2%悪化(8%悪化から4%改善)または0.02ポイント上昇。


プラセボ術を受けた参加者は、生活の質を0.73ポイントと評価しました。

手術を受けた参加者は、生活の質を0.71ポイントと評価しました。


・有害事象については、

1%少ない人(4%少ないから3%多い)が手術で有害事象が起きたと報告されていました。


・4/100人がプラセボ術後の有害事象を報告しました。

3/100人が手術後の有害事象を報告しました。


・重篤な有害事象については、これらの研究からは重篤な有害事象は報告されていません。


観察研究では、重篤な有害事象の発生率は0.5%から0.6%の間でした。


レビューアの結論


このレビューのデータは、痛みを伴う肩の衝突として現れる回旋腱板疾患の治療における肩峰下減圧の使用をサポートしていません。高い確実性のエビデンスは、肩峰下減圧術が、痛み、機能、または健康関連の生活の質において、プラセボよりも臨床的に重要な利益をもたらさないことを示しています。非盲検試験(バイアスのリスクが高い)の結果を含めても、推定値は大きく変わりませんでした。不正確さのため、治療の成功をグローバルに評価するために、エビデンスの確実性を中程度に格下げしました。プラセボ、運動、または非手術的治療と比較して、この結果にはおそらく臨床的に重要な利点はありませんでした。

有害事象の発生率は低く、試験の治療群全体で3%以下でした。これは、2つの観察研究で報告された有害事象の発生率と一致しています。正確な推定値は不明ですが、重篤な有害事象のリスクは1%未満である可能性があります。


まとめ 


これらの研究からは、肩峰下減圧術の利点は少ない、あるいは無いということが示唆されていました。

適応となる疾病としては、インピンジメント症候群などが代表的であるため、研究対象となっていた回旋筋腱板の損傷とはやや異なったりはします。

しかし、これらの結果からも疾病の違いはあっても成果の方が期待できるとは考えづらいものとなっているため、治療方法は検討する必要がありそうです。

骨や軟部組織の状態によっては、関節鏡下などの方法によって治療が施されていますが、保存的に治療を行う例も耳にします。

何にせよ、どの方法にも利点とリスクはありますが、当該する方法だけは慎重に判断したいものです。


Karjalainen  TV, Jain  NB, Page  CM, Lähdeoja  TA, Johnston  RV, Salamh  P, Kavaja  L, Ardern  CL, Agarwal  A, Vandvik  PO, Buchbinder  R. Subacromial decompression surgery for rotator cuff disease. Cochrane Database of Systematic Reviews 2019, Issue 1. Art. No.: CD005619. DOI: 10.1002/14651858.CD005619.pub3. 

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