今回は腰痛を判断する困難さについて
腰痛を有する患者数は多く、日本国内から世界各国でもその割合は上位を占めています。
実は、この悩み多き腰痛を定義づけることは難しく、疾患名ではなく「症状」として捉えられています。
つまりは、安易に腰痛症と判断することも出来れば、基礎疾患の症状の1つに腰痛が出ていることもあるため、注意深く対応する必要があります。
腰痛とは?
腰痛を定義することは難しいため、以下の事柄より検討しなければなりません。
1.疼痛部位
腰痛を部分で定義づける考え方として、「背部後面、第12肋骨~臀溝下端の間、少なくとも1日以上痛みが続き、片側、あるいは両側に、放散痛を伴うこともあれば、伴わないこともある」とあります。
部位で捉えるこの考え方は、痛みが出ている部分で注意が必要となります。
例えば、臀部であれば神経症状が、腰部でも神経根なのか馬尾なのかなど。
2.発症からの期間
発症からの有痛期間を定めるもので、急性、亜急性、慢性と分類する考え方。
急性期は発症から4週まで、亜急性は4週から3か月未満、慢性は3か月以上続くというような状況である。
亜急性期に関しては、考え方が異なることもあります。
3.腰痛を引き起こす原因
数多くの解剖学的組織に傷害が起きているため、分類が必要となってきます。
ここでは、特に鑑別が必要となってくる疾患もあるため、すべて記述します。
3-1.原因となる分類
脊椎と周辺の運動器由来
・脊椎腫瘍
・脊椎感染症
・脊椎外傷
・腰椎椎間板ヘルニア
・腰部脊柱管狭窄症
・腰椎分離すべり症
・腰椎変性すべり症
・代謝性疾患
・脊柱変形
・非化膿性炎症性疾患
・脊柱靭帯骨化
・筋・筋膜性
・脊柱構成体の退行性病変
・仙腸関節性
・股関節性
神経由来
・脊髄腫瘍
・馬尾腫瘍 など
内臓由来
・腎尿路系疾患
・婦人科系疾患
・妊娠
血管由来
・腹部大動脈瘤
・解離性大動脈瘤
心因性
・鬱病
・ヒステリー
3-2.特に鑑別が必要な疾患
鑑別を要するものとして、以下のものがあります。
①悪性腫瘍
原発性、転移性脊椎、脊髄腫瘍 など
②感染症
化膿性椎間板炎、脊椎炎、脊椎カリエス など
③骨折
椎体骨折 など
④重篤な神経症状を伴う腰椎疾患
下肢麻痺、膀胱直腸障害を伴う腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症
補足として、次点に重篤ではない神経症状を伴う下肢の神経症状には、鑑別を必要とし、原因となる疾患を特定しなければならない。
症状として、軽度の麻痺や下肢痛、痺れ、間欠跛行が伴ってきます。
鑑別の困難さ
これだけ由来や定義の中で、腰痛症状の由来を調べることも困難であることがわかりますが、脊柱を構成するいずれの組織で腰痛の疼痛が起きているのかを検討する必要が出てきます。
これを検討する分類としては、脊柱周辺の運動器由来でありますが、殆どは退行性病変が主因となってきます。
しかし、脊柱は多関節であるため、いずれの組織で傷害が起きているのかを特定するのは容易ではなく、特定したとしても他の治療方法と同様のものを行ってよいのかを検討する必要も出てきます。
しかし、上述した4つの特に鑑別が必要な疾患を除外してから、プライマリケアを実践することは言うまでもありません。
まとめ
2019年より前の考え方では、これらの特定する原因や分類に当てはまる腰痛は少ないとされ、非特異的腰痛と言われるものが多くを占めていたことがありました。
しかし、診断法の進歩などにより、それらの原因は異なるのでは?ということから、原因を特定できる腰痛が増えてきたことがあります。
腰痛には生活習慣によるもので起きているものもあり、肥満、喫煙、飲酒、運動しないという要素が主として挙げられています。
そして、職業特性などから腰痛を患うということもあり、多くの人が治療にあたっています。
治療には、確立された手法により、良い成績という根拠のあるものもありますが、心理社会因子が絡んでくると思ったような治療成果とならないこともあります。
そういった多様な因子が、腰痛の原因特定を困難にすることもあるため、腰痛を考える際は消去方法などのようなものが推奨されていたりします。
腰痛といえどもってことでわかっていただけましたでしょうか。