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【ガイドライン】ACL損傷について

Tuesday, January 26, 2021

医療基礎知識


2012年のガイドラインをまとめたものになります。


疫学

リスクファクターについて
大腿骨顆間窩幅が狭い、全身弛緩性、月経周期の卵胞期があげられる。(根拠性中程度)
※他に家族歴、膝関節の過伸展、週4以上のスポーツ習慣、グラウンド、天候なども
 リスクファクターとして考えられてはいるが、根拠性には乏しい。

男女差について
女性の方が2~3倍発生率は高いとされてはいるが、バイアスの関与があるために
この情報も根拠性は低い。

受傷メカニズム
膝の軽度屈曲位、内旋位あるいは外旋位での外反による受傷頻度は高いとの知見もあるが、
科学的なエビデンスは低い


病態・予防

自然経過について
ACL完全断裂を放置すると、その後の明らかな外傷はなくとも、半月板損傷や
関節軟骨損傷をきたす。

部分損傷と完全損傷の予後の違い。
部分損傷は関節鏡で確認され、画像診断で不安定性が軽微であれば予後は良い。
しかし、その後に不安定性が増大する症例は完全損傷と同じ経過となる。
新鮮時に関節鏡で部分断裂と判断されても、不安定性が認められる症例の比率は
完全断裂と同じである(エビデンスレベル低程度)

膝の固有感覚
ACL損傷膝は関節の固有感覚は低下する。(膝の位置、移動を認識する感覚)

リハビリで関節固有感覚の回復は?
関節固有感覚を回復させるリハビリテーションは、改善できるかもしれない。
(3か月やっても変わらなかった症例などもあるため、あくまでかもという言い方)

予防トレーニングの効果は?

予防トレーニングが役に立っている、役に立たないと報告があり、エビデンスも
一致していないことから、トレーニングの効果に心因性の影響があるという結論。


診断

徒手検査
・Lachman test
・Pivot-shift test 
これらの徒手検査は高い精度で特異性を示されています。

MRI

97~98%の有用性と言われています。施設、読影者の影響は多少は受ける。
合併症状である半月板損傷を診断するためにも有用である。


手術

適応
成長期から思春期のACL損傷は保存療法で良いという意見もあるが、
予後が不良であることも報告されているために、保存療法の適応の限界はある。

中高齢者に対しては若年層とも同様の結果が得られ、受傷前と同様のスポーツレベルまで、
復帰が可能と考えられている。保存療法や一次修復術に比べ、一次再建術の選択は
前述した結果が得られている。

保存療法を選択した場合のリハビリテーション

短期的には専門家から指導された方が有意性は高いが、12か月後の状態には
専門家から指導、自分自身でコントロールしながらリハビリするのも、
状態は変わらなかった。


術後の情報(根拠性が高いものだけ。)
・BTBを用いてたACL再建術に関しては早期に膝伸展機能回復から鏡視下法が優れている。

・移植腱の強さに関して言及することはできない。

・ACL再建術後に異常な歩行動態や膝キネマティックが示されるが
 正常に戻るとは言い切れない

・STG腱の固定法については、固定強度に差はあるが、臨床成績に差がない。

・採取されたSTG腱は近位部より再生は起こるが、元々の付着部(解剖学的停止部)
 よりも近位部分までの再生となる。

・BTB法の方が術後安定性は獲得できるが、STG法の術後合併症の低さから
 両者のアウトカムには対立する意見がある。

・再建術で自家腱を使った方が安定性に関しては良好である。

・両側同時ACL再建術は片側再建術と比較しても、臨床成績に差はないので、
 安全性などの費用対効果は高い。

・ACL再建術後の膝装具の使用、スポーツ復帰時の膝装具使用は、
 術後疼痛、関節可動域、膝安定性、再受傷に影響を与えない。

・術後のスポーツ復帰については、安定性パワーなどは得られてから復帰するため、
 術後6か月は必要です。

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