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【ガイドライン】多汗症について

Wednesday, December 23, 2020

医療基礎知識

2012年に発表されているガイドラインから私なりにまとめた内容です。

多汗症?と思われている方やそうでいない方も、
どこからが症状なのか、何を基準に判断しているのかを知識として取得できる
内容を紹介していきます。



病態


頭部・顔面・手掌・足底・腋窩に左右対称性に過剰な発汗を起こす。

※手掌に多汗症が見られる場合は、手掌多汗症と言われるが
 汗腺の個数・分布・形状は正常人との違いはない。

発汗様式はコリン作動性交感神経が関与し、情動を反映する精神発汗である。
但し、中枢として前頭葉・海馬・扁桃核ともいわれているが解明はされていない。

そして家族歴との関連も近年わかったことである。

疫学


中国では4.36% 米国では2.8% イスラエルでは0.6%の割合で手掌多汗症である。
さらに、そのうち米国の中では50.8%の重症の腋窩多汗症であることが報告されている。

罹患者の平均年齢は40代、平均発症年齢は25歳
年齢別の有病率は25~64歳までがピークであり、12歳以下の有病率は下がる。

原発性多汗症の疾患の特徴の一つに、社会的な活動範囲が広く生産性のある年代の
罹患率が非常に高いことが挙げられる。

臨床症状


⑴掌蹠多汗症・・・手掌・足底に精神的緊張により大量の発汗を認める。

⑵腋窩多汗症・・・精神性・温熱性発汗が共存する特殊な状態。

⑶頭部・顔面多汗症・・・男性に多く、症状は年を重ねるごとに増悪する。
            食べ物やストレスにより大量の発汗が起こり、
            これが原因による対人関係に支障をきたし、引きこもる場合も。

診断


局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6か月以上認められ、
以下の6症状のうちに2項目以上にあてはまる場合を多汗症と診断する。
①最初に症状がでるのが25歳以下であること
②対称性に発汗がみられること
③睡眠中は発汗が止まっていること
④1週間に1回以上の多汗のエピソードがある
⑤家族歴がみられること
⑥それらにより日常生活に支障をきたす

発汗の測定法
⑴ヨード紙法
ゼロックス紙100gに対しヨード1gを加え、瓶に1週間保存したのちに紙が
茶褐色に変色してきたら使用する。
発汗箇所に触れると黒色に変化する分かりやすい、簡易的な方法。

⑵Minor法
ヨード液を刷毛で塗布後、乾燥させてからでんぷんを振りかける。
発汗部位は黒紫色に変化し、その範囲を計測して重症度と治療効果を測定する。

重症度判定(HDSS)

自覚症状による以下の4つに分類される
⑴発汗は全く気にならず、日常生活に支障がない。
⑵発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障をきたす。
⑶発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある。
⑷発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある。

これらのうち⑶、⑷が重症とみなされている。

また多汗症は原発性・続発性と基礎疾患の有無で診断もなされるので、
ただの汗っかき、という自覚はしないほうが良いです。


よく選択される治療法

〇10~35%塩化アルミニウム単純外用/ODT
      ↓変化がなければ
〇BT-A局所(50~100U/腋窩)
 ↓変化がなければ
〇塩化アルミニウム外用+ BT-A局所(50~100U/腋窩)

エビデンスレベルは低~中程度ではあるがこの方法で局所・全身と治療を
行っていくことが一般的であり、年齢への対応・中止、変化などが行いやすいことで
第一選択とされる方法である。

そして、第2の選択としてはA型ボツリヌス毒素の局所療法が挙げられています。
これは腋窩に対しては国内外で高く推奨されており、重症例にも使用ができ、
2012年より保険適用ともなっているようで、推奨度が高く設定されている。

第3の選択としては胸腔鏡下胸部交感神経遮断術であるが、可逆的な治療を試したが、
治療に難渋したことから条件付きで推奨されている。
条件とは患者本人の強い希望がある手掌多汗症に限る。ということ。
そして合併症として代償性発汗は避けられないのが、この治療法である。

興味深いQ&A


内服療法は多汗症に有効か?
→抗コリン薬の選択がなされることが多いがエビデンスレベルは低い。
ドイツではRCTにより全身性多汗症に対する薬(日本では未承認)が効果が認められ、
推奨度も高いのですが、局所療法に対しては推奨度は下がります。

心理療法は多汗症に有効か?
→単独で行った心理療法では効果の期待はできないが、認知療法を併用させた
内服薬との治療ではその効果を高める可能性がある・・・という程度です。

代償性発汗は必ず起こるのか?
→胸部交感神経遮断術で代償性発汗が避けられないため、遮断部位を工夫することで
不快感を軽減させることはできる可能性はある。

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