治療薬のヒト腸内細菌との相互作用と生物蓄積性の検討
Bioaccumulation of therapeutic agents by human intestinal bacteria
Klünemann, M., Andrejev, S., Blasche, S. et al. Bioaccumulation of therapeutic agents by human enteric bacteria. Nature (2021). https://doi.org/10.1038/s41586-021-03891-8
内容
この研究では、腸内細菌と治療薬の可用性と有効性について調査しました。腸内細菌と治療薬の相互作用の系統的なマッピングが最近始まったばかりであり、主なメカニズムとして、微生物による薬剤の化学変化(生体内変化)が提案されています。
代表的な25株の腸内細菌による構造的に多様な15種類の薬物の枯渇を調べ、70種類の細菌-薬物相互作用を明らかにし、そのうち29種類はこれまでに報告されていませんでした。
新たな相互作用の半分以上は、薬剤を化学的に修飾したり、細菌の成長に影響を与えたりすることなく、薬剤を細胞内に蓄える細菌、バイオアキュムレーションに起因すると考えられます。その好例として、クリックケミストリー、熱プロテオームプロファイリング、メタボロミクスを用いて、広く使われている抗うつ薬デュロキセチンのバイオアキュムレーションの分子基盤を研究しました。
その結果、デュロキセチンがいくつかの代謝酵素に結合し、各細菌の代謝物の分泌を変化させることがわかったとのことです。
蓄積性細菌と非蓄積性細菌の定義された微生物群集で試験を行ったところ、デュロキセチンは代謝のクロスフィードによって群集の構成を有意に変化させ、研究チームはこの発見を動物モデルで検証し、生物蓄積性細菌が行動反応を弱めることを示しました。
そして、この結果は、腸内細菌によるバイオアキュムレーションが、薬物の利用可能性と細菌の代謝を変化させ、微生物叢の組成、薬物動態、副作用、薬物反応に個別に影響を与える一般的なメカニズムである可能性を示しました。